この記事では給湯設備の設計にフォーカスして、簡潔に説明します。
内容は「給排水衛生設備計画設計の実務の知識 改定4版」をベースにしていますが、本の掲載順では内容が前後していたりわかりにくい部分もありますので、スムーズに理解ができるよう内容の入れ替え、図・画像を追加して再構成しました。
給湯設備の設計が初めてという方から、ある程度経験を積んだ後に「そういえばあれってどういうこと何だっけ?」といった復習にも役に立つ記事になっています。
お湯についての基礎知識
水は温めると体積が膨張する
水の密度は温度によって変化します。
温度 [℃] | 密度 [kg/m3] |
---|---|
5 | 1000.0 |
60 | 983.1 |
100 | 958.1 |
上の表からわかるように、温度が上がるにつれて密度が減少します。
言い換えると体積が膨張します。水の膨張量は以下の式で表されます。
\(ΔV=((ρ_c/ρ_h)-1) \cdot V\)
\(ΔV\):膨張量 [L]
\(ρ_c\):加熱前の水の密度 [kg/L]
\(ρ_h\):加熱後の水の密度 [kg/L]
\(V\):加熱前の装置内の水量 [L]
例えば、5℃の水を60℃に加熱したときの膨張率を求めてみます。
\[ΔV=((1000/983.1)-1) \times V=0.017V\]
つまり、一般的な給湯設備の給湯温度まで加熱すると、1.7%体積が膨張する。ということです。
後で説明しますが、このお湯の膨張に対して安全弁や膨張水槽を設置して安全対策を行います。
お湯を作るのに必要な加熱能力の求め方
さて、お湯を作るにはどの程度の熱量が必要なのでしょうか。
1Lの水を1時間で1℃上昇させるのに必要な熱量は次の式により算出されます。
\(H=0.00116qρΔT\)
\(ΔH\):加熱能力 [kW]
\(q\):水量 [L/h]
\(ρ\):水の密度≒1.0 [kg/L]
\(ΔT\):温度差(湯の温度-水温) [℃]
同じように、5℃の水1000Lを60℃まで1時間で加熱するのに必要な熱量を求めてみます。
\(H=0.00116 \times 1000 \times 1.0 \times (60-5)=63.8\) [kW]
水と湯の混合
一般的な給湯温度は60℃です。これはレジオネラ菌による汚染対策のため、末端の水栓でも55℃以上に保持するように建築物衛生法(通称ビル管法)で定められているからです。
しかし、60℃のお湯をそのまま使用しては火傷してしまいますので、混合水栓で水と混ぜて使用します。
そのときに必要なお湯の量は以下の式で求められます。
\[q_m= \frac{t_m-t_c}{t_h-t_c}\]
\(q_m\):混合湯における給湯量の割合
\(t_m\):混合湯の温度 [℃]
\(t_h\):給湯温度 [℃]
\(t_c\):給水温度 [℃]
一般的な給湯器具の使用適温と適流量は以下の通りです。
使用用途 | 使用適温 [℃] | 適流量 [L/min] |
---|---|---|
食器洗浄 | 39.0 | 7.5 |
壁掛けシャワー | 42.0 | 13.0 |
壁掛けシャワーに必要となる60℃の給湯量を求めてみます。
\((42-5)/(60-5) \times 13.0=8.7 \) [L/min]
設計の手順
給湯設備設計のフローを示します。
STEP1:設計条件の整理
設計の与条件となる以下の項目について整理・検討します。
- 給湯供給箇所と使用人員数
- 給湯方式(中央式、局所式、両者併用)
- 使用湯量原単位 → [L/(人・日)]、[L/(m2・日)]、[L/(min・器具)]※1
- 毎時最大給湯量[L/h]とその継続時間※1
- 給湯使用時間と1日当たりの消費パターン※2
- 各器具における使用適温度と適流量※3
- 計画地域の給水温度※4
- 加熱用熱源と発熱量
※1実務の知識p85 表3.2-1および表3.2-2に記載
※2ヒートポンプ給湯システムなど1日の負荷パターンに基づいてシステムを計画する場合。実務の知識p84 図3.3-2に記載
※3実務の知識p80 表3.1-2に記載
※4実務の知識p86 表3.2-3に記載
STEP2:給湯方式の決定
STEP-1で整理した内容を元に、中央式・局所式・両者併用とするかを決定します。
- 中央給湯方式
-
加熱装置(加熱機、貯湯槽)、配管、循環ポンプ、安全装置(膨張タンク、安全弁、伸縮継手)で構成されます。
給湯配管が長くなるため、湯温維持のために返湯管を設けて湯を循環させる二管式配管とします。
- 局所給湯方式
-
給湯系統ごとに加熱装置を設けて給湯する方式で、返湯管を設けない一管式配管で給湯することが多いです。
STEP3:給湯負荷算定
給湯負荷とは給水温度を給湯使用温度まで加熱する負荷と定義され、同じ給湯量でも給水温度により負荷は異なります。
給湯使用量の算出には以下の5つの方法があります。
- 使用人員による方法
- 器具の使用予測による方法
- 適流量・適温度による方法
- 水と湯の混合割合による方法
- 飲料量給湯量
1.使用人員による方法
使用人員数と建物用途による一人当たりの給湯量[L/(人・日)]から一日当たりの給湯量や時間最大給湯量を求めます。
中央式給湯設備の加熱機や貯湯槽容量の算定に用います。
建物用途別の給湯量は以下の通りです。(実務の知識p85 表3.2-1より抜粋)
建物種別 | 1日あたり給湯量 | 時間最大給湯量[L/h] | 時間最大給湯量の継続時間[h] |
---|---|---|---|
事務所 | 7〜10[L/人] | 1.5〜2.5(一人当たり) | 2 |
ホテル(客室) | 150〜250[L/人] | 20〜40(一人当たり) | 2 |
レストラン | 40〜80[L/m2] | 10〜20(m2当たり) | 2 |
貯湯槽の有効用量は時間最大給湯量とします。
貯湯槽と加熱能力には次式による関係式が成り立つので、これから加熱能力を算定します。
\[0.00116(t_{h1}-t_{h2})V+HT≥0.00116(\frac{t_{h1}+t_{h2}}{2}-t_c)QT\]
\(t_{h1}\):給湯最大使用時開始前の貯湯槽内の湯温(一般に60℃)
\(t_{h2}\):給湯最大使用時終了後の貯湯槽内の湯温(一般に55℃)
\(t_c\):給水温度 [℃]
\(V\):貯湯槽内の有効貯湯量 [L](一般に貯湯槽容量の70%程度)
\(Q\):時間最大給湯量 [L/h]
\(H\):加熱能力 [kW]
\(T\):時間最大給湯量の継続時間 [h]
宿泊客数200人のホテル客室系統の貯湯槽容量と加熱能力を求めます。(給水温度は5℃)
時間最大給湯量=200人×20L/(h・人)=4000L/h
時間最大給湯量を貯湯するものとして、有効貯湯量を貯湯槽容量の70%とすれば、
貯湯槽容量=4000L/0.7=5700L
0.00116(60-55)×4000+2H≥0.00116((60+55)/2-5)×4000×2
H≥232kW
よって加熱能力を240kWとします。
2.器具の使用予測による方法
小規模な中央式給湯設備や局所式給湯設備の加熱機や貯湯槽容量の算定に用います。
\[Q_h=U(Σn \cdot H_q)\]
\(Q_h\):1時間当たりの給湯量 [L/h]
\(U\):器具の同時使用率
\(n\):使用器具数
\(H_q\):器具の1時間当たりの給湯量 [L/h]
各建物における器具別給湯量は以下の通りです。(実務の知識p85 表3.2-2より抜粋)
※給湯温度60℃基準での器具1個当たりの給湯量[L/h]を示しています。
器具種類 | 事務所 | ホテル | 工場 |
---|---|---|---|
一般洗面器 | 23 | 30 | 45.5 |
浴槽 | – | 76 | – |
シャワー | 114 | 284 | 850 |
台所流し | 76 | 114 | 76 |
同時使用率 | 0.30 | 0.25 | 0.40 |
貯湯槽容量係数 | 2.00 | 0.80 | 1.00 |
\[V=Q_h \cdot ν_t\]
\(V\):貯湯槽容量 [L]
\(ν_t\):貯湯槽容量係数
\[H=0.00116Q_h(t_h-t_c)\]
\(H\):加熱能力 [kW]
\(t_h\):給湯温度 [℃]
\(t_c\):給水温度 [℃]
3.適流量・適温度による方法
各器具の適流量と適温度から加熱機の能力を算出するものです。
局所給湯方式の設計に用います。
使用用途 | 使用適温 [℃] | 適流量 [L/min] |
---|---|---|
台所流し(食器洗浄) | 39.0 | 7.5 |
壁掛けシャワー | 42.0 | 13.0 |
上記表の器具1台ずつある場合の必要加熱量を求めてみます。
\(H=0.00116qρΔT\)より
\(H=0.00116 \times 1.0 \times (7.5 \times (39.0-5.0)+13.0 \times (42.0-5.0)) \times 60min=51.2\) [kW]
200Lの浴槽に24号のガス瞬間給湯器で給湯する場合の湯はり時間を求めてみます。
まずは、200Lの水(5℃)をお湯(43℃)にするのに必要な熱量を求めます。
水の比熱(1kgの水を1℃上げるのに必要な熱量)は4.2[kJ/kg・K]なので、
4.2×200×(43-5)=31920[kJ]
ガス瞬間給湯器の能力表示に用いられる1号当たりの加熱能力は104.65kJ/min(1.74kW)なので、湯はり時間は、
31920/(24×104.65)=12.7[min] となります。
4.水と湯の混合割合による方法
器具での使用温度に対する給湯(60℃)流量を水と湯の混合割合から求める方法です。
「水と湯の混合」の項目で解説した内容です。
5.飲料用給湯量
飲料用給湯設備の貯湯容量は次式で算出します。
\[Q=q_n \cdot N/K\]
\(Q\):貯湯量 [L]
\(q_n\):1人1回当たりの使用量 [L/人](一般に0.25L/人)
\(N\):使用人数 [人]
\(K\):有効出湯量率(一般に70%)
1フロア102人の給湯室に設置する電気温水器の貯湯量を求めてみます。
Q=0.25×102/0.7=36.4[L] →貯湯量40Lの電気温水器を選定します。
STEP4:加熱装置の選定
加熱装置には以下に示すものがあり、必要給湯量に応じて最適なものを選定します。
- 貯湯式ボイラ
-
一般に鋼板やステンレス鋼製貯湯式ボイラが使われることが多く、給湯量が多い場合には貯湯槽と組み合わせて使用することもあります。
- ガス給湯器
-
広く一般的に使用されている給湯器。ガス瞬間式給湯器には「元止め式」と「先止め式」があります。
「元止め式」は給湯器から直接給湯する形式で、流し台などの水受け容器の上部に設置しますが、排気ガスが直接排出されるため換気設備が必要になります。
「先止め式」は給湯配管に取り付けた給湯栓を開くことで生じる水流・水圧の変化によってガスを点火させて加熱する方式です。
ガス瞬間式給湯器では能力表示に「号」を用います。1号=104.65kJ/min=1.74kW
- ヒートポンプ給湯器
-
大気から熱を取り、高温の湯を貯湯して給湯する装置です。
燃焼式加熱機に比べて30〜40%の省エネルギー効果があります。
- 深夜電力温水器
-
電気使用量が安価な夜間電力を使用して水を加熱、タンク内に貯湯して給湯するものです。
- 温水発生機
-
温水発生機には真空式と無圧式があります。労働安全衛生法に基づく「ボイラー及び圧力容器安全規則」に抵触しないため、法で定める運転資格者を必要としない等、取扱が容易な装置です。
- 複合熱源加熱装置(ハイブリッド給湯)
-
ヒートポンプ給湯器と燃焼式加熱機を組み合わせて、電気加熱方式と燃焼加熱方式それぞれの特徴を活かした加熱方式です。
給湯負荷変動の少ないベース負荷をヒートポンプ給湯器が受け持ち、ベース負荷以上の時間帯やヒートポンプの能力が低下する外気温となるときには燃焼式加熱機でバックアップする仕組みとなっています。
- 家庭用燃料電池(エネファーム)
-
都市ガスから燃料処理装置で水素を作り、燃料電池で水素と空気中の酸素を反応させ電気を発電します。発電時に発生する排熱から温水を作り、給湯に利用します。
STEP5:循環配管管路の決定・作図
ここからは中央式給湯設備の配管方式について説明します。
中央式給湯設備は配管が長くなるので、供給温度の低下を防ぐために返湯管を設けて湯を循環させる二管式配管とし、下記に留意して計画します。
- 配管内の空気をできるだけ早く排除する
- システム内の湯温を55℃以上に保つため、滞留箇所が生じないように配慮する
- 先止まり配管を最小限に留めるように計画する
配管内の空気抜き
配管内に空気が残っていると湯の流れを阻害したり、配管腐食の原因となります。
気泡は高温で圧力が低い箇所で発生しやすいので、空気抜きは加熱装置の近くでかつ建物の最高所で行うのが効果的です。
加熱装置が建物下層階ににある場合には、まず給湯主管を最上階まで立ち上げて空気抜きを行ってから各所に給湯する下向き給湯方式が適しています。
上向き給湯は空気抜き弁からの空気が抜けにくいため避けた方が良いです。
配管は気泡が配管内に滞留することがないよう、器具に向かって下がり勾配を保ち鳥居配管とならないように注意します。
湯の循環に適した配管方法
湯の循環では給湯管を給湯系統ごとに給湯栓を直列に接続するように配管し、その末端から返湯管を取り出し一管循環配管方式が適しています。
循環流量が一部の系統に偏ることがないよう各系統末端の返湯主管接続部分に定流量弁を設置します。
器具に接続する器具給湯管は慣例的に最小管径を20mmとすることが多いです。
次に局所式の給湯配管方式について説明します。
局所式の場合には配管長が短い場合が多いので一般に往管のみの一管式配管が用いられますが、厨房や浴場などの比較的連続して湯が使用される場合には返湯管を設けます。
一管式の場合には湯待ち時間を短くするためにできるだけ配管長を短くするとともに、過大な管径とならないように注意します。
湯待ち時間は、「配管の滞留時間(配管内保有水量/流水量)」+「給湯器着火時間(3秒程度)」+「給湯器・配管の蓄熱に要する時間(5〜10秒程度)」で表され、「配管の滞留時間」を10秒以下を目安に配管計画をすることが望ましいとされています。
STEP6:給湯管径の決定
給湯配管の管径は瞬時最大給湯量を算出し、許容摩擦損失水頭および管内流速によって決定します。管内流速は銅管で0.4〜1.5m/s、ステンレス管で0.4〜2.0m/sの範囲とします。
瞬時最大給湯量は下記の方法で算出します。
- 給湯単位による方法
- 使用温度と同時使用率による方法
①給湯単位による方法
器具の給湯単位に器具数を乗じて合計し、給湯単位と瞬時最大給湯量算出図から求める方法です。給水の器具負荷単位と同じ考え方です。
給湯算出図では給湯単位10以下の範囲は読み取ることができないため、その場合には次に示す「使用温度と同時使用率による方法」を用いて算出します。
②使用温度と同時使用率による方法
器具湯温60℃の使用湯量、設置数、同時使用率によってその系統の瞬時流量を求める方法です。工場などのシャワールームや浴場の洗い場水栓など、器具の集中同時使用が予想される場合にはこちらの算出方法によります。
器具 | 使用温度 | 使用流量 | 給湯(60℃)流量 | 配管径 | |
[℃] | [L/min] | [L/min] | 銅管(A) | SUS管(Su) | |
洗面器 | 39 | 8 | 5 | 10 | 10 |
シャワー | 42 | 13 | 9 | 15 | 13 |
多機能シャワー | 40 | 25 | 16 | 20 | 20 |
バス水栓 | 42 | 20 | 13 | 20 | 20 |
流し水栓(13) | 40 | 15 | 10 | 15 | 13 |
流し水栓(20) | 40 | 25 | 16 | 20 | 20 |
器具数 | 1 | 2 | 4 | 8 | 12 | 16 | 24 | 32 | 40 | 50 | 70 | 100 |
同時使用率[%] | 100 | 100 | 70 | 55 | 48 | 45 | 42 | 40 | 39 | 38 | 35 | 33 |
壁掛けシャワー8組に対する給湯流量を求めて見ます。
9L/min×8×同時使用率55%=39.6L/min
STEP7:返湯管径(仮)の決定
1給湯系統の必要循環流量はきわめて少量であることから、市販されている定流量弁の最小口径15Aの最小制御流量である3L/minを1給湯系統当たりの循環流量とし、各給湯系統の返湯管と接続する返湯主管の管径を仮決定します。
STEP8:配管の放熱量計算
配管からの放熱量は管径ごとの配管長を求め、次に示す湯温と配管周囲温度と温度差1℃当たりの単位放熱量を乗じて放熱量を算出します。周囲温度は屋内配管シャフトの場合には20℃とし、シャフトが外気に面する場合などは状況に応じて決定します。
種別 | 15A | 20A | 25A | 30 | 32A | 40A |
保温銅管 | 0.20 | 0.24 | 0.28 | – | 0.32 | 0.36 |
保温SUS管 | 0.20 | 0.24 | 0.28 | 0.31 | – | 0.37 |
配管放熱量から次の式で必要循環流量を求めます。
\[W=\frac{0.86ΣH_p}{60ΔT}\]
\(W\):循環流量 [L/min]
\(H_p\):配管からの合計放熱量 [W]
\(ΔT\):許容温度降下(一般に5℃)
配管放熱量に弁やポンプなどの放熱量を配管放熱量の10%程度見込みます。
STEP9:返湯管の管径調整・決定
放熱量から求めた必要循環流量より、定流量弁設置個数により求めた流量の方が多くなる場合には仮決定した管径を採用します。大半の場合には仮決定した管径で決定します。
放熱量から求めた必要循環流量の方が多くなった場合には必要循環流量を定流量弁の設置個数で割った流量を各給湯系統の返湯流量として、再度返湯管径を調整し決定します。
STEP10:循環ポンプ決定
給湯循環ポンプは給湯管からの放熱により給湯温度が低下することを防止するために設置します。給湯栓の流水必要圧力は貯湯槽に接続される給水側からの水圧によるものであり、給湯循環ポンプによるものではありません。
ポンプ流量は放熱量から求めた循環量と定流量弁設置個数に3L/(min・個)を乗じた流量の大きい方を採用します。
ポンプ揚程は貯湯槽から最も遠い系統の管路の返湯管路の循環流量に対する損失と定流量弁の損失(30〜50kPa)により求めます。給湯往管の管径は循環流量に対して大きいため、給湯側の摩擦抵抗は無視します。
給湯設備の安全装置について
膨張に対する安全装置
逃し弁(安全弁)
逃し弁は給湯ボイラや貯湯槽などの圧力容器の内部圧力が容器の最高使用圧力を超えた場合、湯を排出して容器内の圧力を下げる装置です。高温の湯が排出されるため、安全性を配慮した放流位置の検討が必要になります。
溶解栓
小型ボイラに接続した貯湯タンクや温水ヘッダなど、水温が100℃を超える容器に設置する安全装置で、真空式や無圧開放式温水器の場合には100℃を超えることがないため不要です。
膨張水槽
膨張水槽には開放式と密閉式があります。開放式は過熱による膨張量を考慮して圧力容器に接続する給水管の水圧に等しい高さ以上の位置に設置します。密閉式は圧力容器の近くに設置します。
開放式膨張水槽は高置水槽給水方式のように常に一定の静水頭が保たれている場合に使用しますが、ポンプ直送方式のように吐出圧力が最高所からの静水頭を超える場合が多い給水方式では密閉式を用います。
密閉式膨張水槽の容量は以下の式より算出します。
\[V=\frac{(ρ_c/ρ_h-1)v}{P_0/P_1-P_0/P_2}\]
\(ρ_c\):加熱前の水の密度 [kg/L]
\(ρ_h\):加熱後の水の密度 [kg/L]
\(v\):給湯設備の全水量 [L]
\(P_0\):密閉式膨張水槽の初期封入絶対圧力 [kPa]
\(P_1\):膨張水槽設置位置での加熱前の絶対圧力 [kPa]
\(P_2\):給湯装置の許容圧力 [kPa]
配管の伸縮に対する安全装置
給湯配管は湯温の変化に応じて伸縮します。伸縮は配管長が長いほど大きくなり、継ぎ手に過大な力がかかり破損する場合もあります。この伸縮を吸収するために直管部では伸縮継手や伸縮曲管を使用し、分岐部ではスイベルジョイントを使用して配管に可とう性を持たせます。
配管の伸縮量は次式で求められます。
\[Δl=1000αlΔt\]
\(Δl\):管長の伸縮量 [mm]
\(α\):管の線膨張係数 [1/℃]
\(l\):温度変化前の管の長さ [m]
\(Δt\):温度変化 [℃]
加熱装置に対する法的規制
労働安全衛生法により加熱機はボイラとして、貯湯槽などは圧力容器としての規制が定められています。
小型ボイラは設置届の提出、年1回の定期自主検査が、ボイラとなると設置時の検査や年1回の外部機関による検査が義務付けられています。
法による区分 | 設置届など | 取扱責任者 | 定期自主検査 | 性能検査 | 備考 |
小型圧力容器 | ー | ー | 1回/年 | ー | 蒸気などの熱媒により液体を加熱する容器で大気圧を超えるもの |
第一種圧力容器 | 設置届など完成検査 | ー | 1回/年 | 1回/年 | |
第二種圧力容器 | ー | ー | 1回/年 | ー | 上記以外 |
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