- ウォーターハンマーが起きる物理的なメカニズム
- 建物設備での具体的な発生箇所と条件
- 設計・施工で使える実践的な対策方法と機器の選び方
ウォーターハンマー(水撃作用)とは

ウォーターハンマー(water hammer)とは、配管内を流れる液体が急激に減速・停止したとき、その運動エネルギーが圧力エネルギーに変換されて配管内に衝撃的な圧力波が生じる現象です。日本語では水撃作用とも呼ばれます。
この圧力波は音速に近い速さで配管内を伝播するため、配管・継手・弁・機器に繰り返し過大な応力が加わり、最終的には亀裂・漏水・設備の損傷につながります。
発生メカニズム|ジュコフスキーの式で理解する

ウォーターハンマーで発生する水撃圧の最大値は、ジュコフスキーの式で概算できます。
ΔP = ρ × a × ΔV
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| ΔP | 水撃圧(圧力上昇分) | Pa |
| ρ | 液体の密度(水:約1,000) | kg/m³ |
| a | 配管内の音速(一般的な鋼管:約1,200〜1,400) | m/s |
| ΔV | 流速の変化量 | m/s |
計算例: 流速2 m/sで流れている給水管を急閉止した場合
ΔP = 1,000 × 1,200 × 2 = 2,400,000 Pa(約2.4 MPa)
通常の給水圧力が0.1〜0.3 MPa程度であることを考えると、この値がいかに大きいかわかります。配管の許容圧力を容易に超えてしまう可能性があります。
建物設備での発生箇所

給水・給湯設備
- 電磁弁・電動弁の急閉止:洗濯機・食洗機・自動水栓などで頻繁に発生
- 逆止弁の閉止:ポンプ停止時に逆止弁が急閉すると大きな水撃が生じる
- ポンプの急起動・急停止:揚水ポンプや循環ポンプで起こりやすい
空調・冷却水設備
- チラー・熱交換器まわりの流量制御弁:ON/OFF制御弁は急閉止が発生しやすい
- 冷却塔への補給水ライン:ボールタップや電磁弁の急閉による圧力変動
消火設備
- スプリンクラーの一斉開放弁:開放時の急激な流量変化で水撃が生じやすい
影響・被害

繰り返し発生するウォーターハンマーは以下のような問題を引き起こします。
配管・機器への損傷
- 継手・フランジ部からの漏水
- 配管の疲労亀裂
- 弁・ストレーナの損傷
建物・居住性への影響
- 壁・床を伝わる衝撃音(バン・ゴンという音)
- 配管支持金物の緩み・脱落
- 振動による他設備への悪影響
設計上の対策

① ウォーターハンマー防止弁(水撃防止器)の設置
配管の末端や弁の近傍に設置し、圧力波のエネルギーをアキュムレータ内のエアクッションで吸収します。
選定ポイント:
- 設置箇所の最高使用圧力に適合した製品を選ぶ
- 水平配管・立て管のいずれにも対応できるタイプか確認
- 定期的なエア補充が不要なダイヤフラム式が維持管理上おすすめ
② ソフトクロージングバルブの採用
閉止に要する時間を長くすることで流速の変化率(ΔV/Δt)を下げ、水撃圧を低減します。電動弁では閉止時間を5〜10秒以上に設定することが目安です。
③ 流速の適正管理
配管内流速が高いほど水撃圧は大きくなります。給水配管の流速は一般に以下を目安に設計します。
| 配管種別 | 推奨流速 |
|---|---|
| 給水横引管 | 1.0〜2.0 m/s以下 |
| 給水立て管 | 1.0〜3.0 m/s以下 |
| 給湯管 | 1.5 m/s以下 |
④ ポンプ周りの対策
- フライホイールの設置:ポンプの慣性を大きくして急停止を防ぐ
- 緩閉式逆止弁の採用:弁体がゆっくり閉まることで水撃圧を抑える
- サージタンクの設置:大規模設備では圧力緩衝タンクを設ける
⑤ 配管設計の工夫
- 配管内にエアだまりが生じない勾配設計(空気が溜まると水撃を悪化させる)
- 急激な断面変化・曲がりを極力避ける
- 配管固定・支持を適切に行い、振動の伝播を抑える
チェックリスト|設計時の確認事項

- 電磁弁・電動弁の使用箇所に水撃防止器を検討したか
- 弁の閉止時間を仕様書で確認・指定したか
- 給水・給湯管の流速が適正範囲に収まっているか
- ポンプ停止時の逆流対策(緩閉式逆止弁など)を検討したか
- 配管の支持・固定が振動を考慮した計画になっているか
まとめ

ウォーターハンマーは「配管からの音がうるさい」という程度の問題ではなく、放置すれば配管破損・漏水・設備損傷につながる重大なリスクです。
設計段階での対策が最もコスト効率が高く、ジュコフスキーの式で発生圧力を概算しながら、防止弁・ソフトクロージング弁・流速管理を組み合わせることが重要です。既存設備で問題が発生している場合は、まず水撃防止器の後付け設置から検討しましょう。
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