この記事では空調配管系統に設置する膨張タンクの役割と選定方法について解説します。
空調システムの設計終盤で膨張タンクの選定でつまずいてしまう人も多いかと思います。
計算の考え方も配管システム図を参照しながら確認することで、計算式の意味も理解しやすいかと思い、配管図も都度表示して解説しています。
冷温水配管系統の膨張タンクとは?
密閉式配管系では配管内が温度変化により膨張・収縮するので、配管系内の圧力上昇を防止するために膨張水槽を設置します。
動画でわかりやすく解説されているものがありましたので紹介します。
膨張水槽には開放式と密閉式があります。
開放式膨張タンク
開放式膨張タンクの容量は、膨張量の1.5〜2倍程度に取ります。設置場所は最高所にある機器・配管系より1〜2m以上以上高い位置とします。膨張管は運転時に大気圧以下になるところがないように、ポンプの吸込み側に接続します。膨張管の配管径は水張り時も考慮し、32A以上とします。
密閉式膨張タンク
密閉式膨張タンクはその名前の通り、大気に開放されておらず密閉されています。膨張タンク内にダイヤフラムやプラダが入っており、これらが変形することで配管系の圧力変動を吸収します。
膨張タンクの配管図例 膨張タンクの接続位置は?
以下に密閉式膨張タンクの配管例を示します。補給水に上水を用いるときはクロスコネクションにならないように、減圧式逆流防止弁を用います。膨張タンクは還りヘッダーに接続します。
膨張タンクと逃がし弁はセットで考えます。逃がし弁についてはベンからわかりやすい解説資料が公表されています。

安全弁と逃がし弁の違いは?
安全弁と逃がし弁、似ているため混同して使われていることもありますが、厳密には異なります。
安全弁:蒸気や気体に使用する。設定圧力で急速に弁が開放される。
逃がし弁:液体に使用する。設定圧力で弁が開きはじめ、「圧力上昇に応じて」弁開度が大きくなる。
逃し弁の動作をわかりやすく解説している動画がありましたので紹介します。
密閉形隔膜式膨張タンクの算定
配管内水量V1を求める
配管径ごとの単位内容積を合算します。
配管径 | 単位容積[L/min] |
---|---|
15A | 0.20 |
20A | 0.37 |
25A | 0.60 |
32A | 1.00 |
40A | 1.36 |
50A | 2.20 |
65A | 3.62 |
80A | 5.12 |
100A | 8.71 |
125A | 13.44 |
150A | 32.91 |
機器内水量V2を求める
機器内水量はメーカーカタログや技術資料から求めます。以下に空調機の保有水量の一例を示します。

V1とV2を合算してシステム保有水量Vを求めます。
V=V1+V2 [L]
装置内全水量と最高/最低使用温度から膨張量ΔVを求める
最高使用温度時の水の比容積と最低使用温度時の比容積の差から膨張量ΔVを求めます。
ΔV=(v2-v1)V [L]
v1:最低使用温度時の水の比容積[L/kg]
v2:最高使用温度時の水の比容積[L/kg]
膨張タンクの最低使用圧力(膨張タンク空気室初期充填圧力)P1を求める
P1=a+b+c [kPa]
a:膨張タンクに加えられる補給水圧力[kPa]
b:循環ポンプにより膨張タンクに加えられる圧力[kPa]
c:大気圧力=98[kPa]

膨張タンク内の圧力がP1の状態から水の膨張による圧力上昇として許容できる幅ΔPを求める
ΔP=d-(e+f+g) [kPa]
d:逃し弁セット圧力
e:逃がし弁に対する余裕=d×0.1
f:逃し弁に加えられる補給水圧力=接続位置補給水圧力-補給水接続位置から逃がし弁説置く位置までの損失水頭
g:循環ポンプにより逃し弁に加えられる圧力=循環ポンプの吐き出し揚程-循環ポンプから逃がし弁接続位置までの損失水頭

膨張タンクの最高使用圧力P2を求める
P2=P1+ΔP [kPa]
膨張タンクの最小有効容量を求める
以下の式にて最小有効容量を求めます。
V=ΔV/(1-P1/P2) [L]
機器表に記載する
今まで求めてきた以下の内容を機器表に記載します。
- タンク容量(最小有効容量の1.5倍程度)
- 最小有効容量
- 最高使用圧力
- 最高使用温度
- 封入圧力(膨張タンク最低使用圧力)
- 付属品
- 断熱の有無
- 圧力容器か否か
- 補給水圧
- 逃し弁セット圧
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