ダクトの防火区画貫通はどうする?FD・SD・SFDの使い分けを解説

防火区画の壁をダクトと配管が貫通している建設現場のクローズアップ。FD(防火ダンパー)と耐火充填材が写る

ダクトが防火区画を貫通するとき、FD・SD・SFDのどれを選べばいいのか迷っていませんか?

面積区画はFDでいいとして、竪穴区画や異種用途区画になるとSD?SFD?判断基準がわからない

結論から言うと、区画の種類ごとに「煙の伝搬を防ぐ必要があるか」で判断します。面積区画はFD(温度ヒューズ)、竪穴区画・異種用途区画はSD又はSFD(煙感知器連動)が原則です。

この記事では建築基準法施行令第112条をベースに、区画の種類別にダンパーの選定基準を一覧表で整理します。現場で迷わないフローチャートも用意しました。

この記事を読み終えると、どの防火区画にどのダンパーを設けるべきか即答できるようになります。

目次

防火ダンパーの種類と略号|FD・SD・SFDの違いを30秒で理解

防火区画貫通部に設けるダンパーは大きく3種類あります。それぞれの閉鎖機構と役割の違いを押さえましょう。

略号正式名称閉鎖トリガー
FD防火ダンパー(Fire Damper)温度ヒューズ(72℃ / 120℃)
SD防煙ダンパー(Smoke Damper)煙感知器連動
SFD防煙防火ダンパー(Smoke Fire Damper)煙感知器連動+温度ヒューズ
※FD・SD・SFDは設備業界で広く使われる略称(通称)です。法令上の正式名称は「防火設備」等になります。

FDは温度上昇で閉じるだけ。SDは煙を感知して閉じるだけ。SFDはその両方の機能を持ち、煙でも温度でも閉じます。

なぜ「煙」を防ぐ必要があるかというと、火災による死亡原因の大きな割合をCO中毒・窒息(煙)が占めているからです。煙は熱よりはるかに速く拡がるため、温度ヒューズが溶ける前にダクトを通じて煙が隣の区画に流入してしまいます。

つまりFDだけだと「火は防げても煙は防げない」場面がある。竪穴や異種用途で煙連動が必須な理由はここ

面積区画のダクト貫通処理|FD(温度ヒューズ)が基本

面積区画を貫通するダクトにはFD(防火ダンパー)を設置します。閉鎖方式は温度ヒューズ、熱感知器連動、煙感知器連動のいずれかが認められていますが、実務ではほとんどの場合温度ヒューズ式を採用します。

面積区画の基準おさらい

建築基準法施行令第112条に基づき、主要構造部が耐火構造または準耐火構造の建物では以下の面積ごとに区画が必要です。

条件区画面積
原則(代表的な例)1,500m²以内
スプリンクラー設置(倍読み)3,000m²以内

用途上やむを得ない劇場や工場の部分は対象外です。

温度ヒューズの選定|72℃と120℃の使い分け

防火ダンパーの温度ヒューズは、設置場所の通常使用温度に応じて選定します。

設置場所ヒューズ温度理由
一般居室・事務室・廊下72℃通常の排気温度は40℃程度で十分なマージン
厨房・湯沸室・ボイラー室120℃排気温度が高いため72℃だと誤作動する

72℃ヒューズを厨房排気に使うと、調理時の高温排気で誤作動します。設計図面で見落としやすいポイントなので必ず確認しましょう。

点検口の設置義務

防火ダンパーには近接した位置に一辺450mm以上の点検口を設けることが義務付けられています(平成12年建設省告示第1376号)。天井裏にFDを配置する場合は、天井点検口の位置とセットで計画します。

実務では「FDの位置は決まったけど点検口が計画されていない」というケースが頻発します。意匠図との整合を早い段階で確認しておくことが重要です。

面積区画におけるダクト貫通処理の基本構成図

面積区画は「FD+温度ヒューズ+点検口」の3点セットで覚えておけばOK

高層区画のダクト貫通処理|11階以上は100m²ごとに区画

高層区画(11階以上の部分)を貫通するダクトにもFDを設置します。ダンパーの選定は面積区画と同じ考え方です。

高層区画の基準

建築物の11階以上の部分は、原則として100m²以内ごとに防火区画します(内装制限適用で200m²、スプリンクラー設置でさらに倍の500m²まで緩和あり)。低層部の面積区画(1,500m²)に比べて格段に細かい区画が求められるため、ダクトルートの計画段階から区画位置を意識する必要があります。

高層区画は火災時の消防活動が困難になることを想定した規定です。高層部は梯子車が届かないため、区画を細かくして延焼拡大を抑えるという考え方がベースにあります。

実務上の注意点

100m²ごとの区画は非常に細かいため、1フロアに複数のFDが必要になるケースが出てきます。特にホテルや集合住宅の高層階では、各住戸間の区画壁がそのまま高層区画を兼ねることが多いです。

共用廊下を経由する空調ダクトは、住戸間の区画壁を貫通するたびにFDが必要です。ダクトルートの検討段階で、FDの数量と点検口の位置を早めに確定させましょう。

高層区画は面積が小さい分FDの数が増える。ダクトルートの計画段階で区画位置を確認しないと後から大変なことになる

竪穴区画のダクト貫通処理|煙感知器連動(SD・SFD)が必須

竪穴区画を貫通するダクトには、煙感知器連動のダンパー(SD又はSFD)を設置します。温度ヒューズのみのFDは原則使用できません。

竪穴区画とは

階段室・エレベーターシャフト・吹抜けなど、複数階にわたる竪穴部分とその他の部分を区画するものです。

火災時の階段室は煙突効果で煙が急速に上昇・拡散します。避難階段に煙が入ると上階の避難者が逃げ場を失います。だからこそ竪穴区画では「煙を感知して即座に閉じる」ダンパーが必要なのです。

竪穴区画の概念図|階段室と一般室の関係

SDとSFDの使い分け|感知器の位置がカギ

竪穴区画ではSDかSFDを使いますが、どちらを選ぶかは煙感知器とダンパーの位置関係で決まります。

条件選定理由
ダンパー設置部の天井に煙感知器ありSDが基本煙感知器が直接検知→ダンパー閉鎖で十分
煙感知器がダンパーと別の部屋にあるSFDが一般的感知器が反応しない火災に備え温度ヒューズでもバックアップ

実務的には、ダクトが天井裏を通って別の部屋で竪穴区画を貫通するケースが最も多いです。この場合、ダンパー設置位置の天井裏に煙感知器がないため、SFDを採用します。

竪穴区画にFD(温度ヒューズのみ)を設置するのは不可です。確認申請で必ず指摘されます。

竪穴区画は「煙連動が必須」と覚える。SDかSFDかは感知器の位置で決める

異種用途区画のダクト貫通処理|用途の境界を煙で守る

異種用途区画を貫通するダクトにも、煙感知器連動のダンパー(SD又はSFD)を設置します。竪穴区画と同じく、温度ヒューズのみのFDは原則使用できません。

異種用途区画とは

1つの建物に異なる用途が混在する場合(事務所と駐車場、店舗と共同住宅など)、その用途の境界を区画するものです。

駐車場で発生した排ガスや火災煙が事務所に流入したり、飲食店の調理煙が住戸に入ったりすることを防ぐための規定です。

例外:ダクトが貫通しているだけで煙の伝搬がないケース

異種用途区画にはひとつ例外があります。ダクトが区画壁を貫通しているだけで、そのダクトからは当該区画内に煙が流入する構造になっていない場合は、FD(温度ヒューズ)で足ります。

具体的には、駐車場の区画壁を貫通する事務所系統の排気ダクトが、駐車場側に吹出口や吸込口を持たないケースです。このダクトは駐車場の煙を吸い込む構造になっていないため、煙連動は不要と判断できます。

ただし、この判断は審査機関によって見解が分かれる場合があります。事前に確認申請先と協議しておくのが確実です。

異種用途区画も原則は煙連動。ただし「煙が入らない構造」なら温度ヒューズでOKな場合もある

区画別ダンパー選定フローチャート|迷ったらこの図で判断

ここまでの内容を1枚のフローチャートに整理します。現場や図面チェックで迷ったときはこの流れで判断してください。

FD・SD・SFDの使い分けフローチャート

判断フローをテキストでも整理します。

▼ ダンパー選定フロー

  1. 貫通する区画は面積区画 もしくは 高層区画か? → YES → FD(72℃ / 120℃)
  2. 貫通する区画は竪穴区画か? → YES → ダンパー近傍に煙感知器あり? → YES:SD/NO:SFD
  3. 貫通する区画は異種用途区画か? → YES → ダクトに吹出口・吸込口がその区画内にある? → YES:SD もしくは SFD/NO:FD可(要協議)

上記フローの判断に迷う場合は、安全側に倒してSFDを採用するのが実務上の鉄則です。SFDはFDの機能も兼ねているため、過剰スペックで問題になることはありません。

迷ったらSFD。煙も温度も両方カバーできるから安全側に振れる

耐火ダクトという選択肢|FDを設けられないときの代替手段

やむを得ずFDを設けられない場合、耐火ダクト仕様にすることでFDの設置を免除できる場合があります。

耐火ダクトの使用場面

耐火ダクトは主に排煙ダクトの横引き部分で使用されます。排煙主ダクトがシャフトから出て横引きされる区間は、火災時にも排煙機能を維持する必要があるためFDを設けられません。このような場合に耐火ダクトを採用します。

また、慣例的に空調・換気ダクトでも以下のケースで用いられます。

  • 天井裏のスペース不足でFDの設置・点検スペースが確保できない
  • 区画壁の位置とダクトの交差部が多すぎてFDだらけになる
  • 改修工事で既存ダクトに後からFDを追加できない

耐火ダクトの標準仕様

一般的な耐火ダクトの仕様は以下の通りです。

項目仕様
ダクト板厚1.6mm以上が一般的(通常ダクトは0.5〜1.2mm)
断熱被覆ロックウール25mm以上
耐火性能1時間耐火

耐火ダクトの採用可否は各審査機関によって判断が分かれます。法的に明文化された基準ではなく慣例的な運用のため、必ず事前に審査機関と協議してください。

耐火ダクトの詳細な条件や排煙ダクトとの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

耐火ダクトは「FDが置けないときの奥の手」。ただし審査機関と必ず事前協議が必要

設計時によくある失敗と対策|確認申請で指摘されるポイント

防火区画貫通部のダンパー設計で、確認申請や現場でよく指摘されるポイントをまとめます。

失敗①:竪穴区画にFDを指定してしまう

最も多い指摘です。階段前室やEVシャフト周りのダクト貫通部にFD(温度ヒューズ)を指定してしまうケース。煙連動のSD又はSFDに修正が必要です。

失敗②:点検口を忘れる

FD・SFDの近傍に点検口がないと、消防検査で指摘されます。天井仕上げ後に指摘されると大きな手戻りになるため、設計段階で意匠担当と点検口の位置を調整しましょう。

失敗③:厨房排気に72℃ヒューズを使う

前述の通り、厨房・湯沸室の排気系統には120℃ヒューズを使用します。72℃だと通常使用時に誤作動し、換気が止まってしまいます。

失敗④:ダクトの材質が基準未満

防火区画貫通部のダクトは、厚さ1.5mm以上の鋼板で作る必要があります(告示第1376号)。貫通部の前後についても標準詳細図では両側1mの範囲を同等仕様とするのが一般的です。通常の亜鉛鉄板ダクト(0.5〜1.2mm)では基準を満たさないため、貫通部前後の区間だけ板厚を上げる指定を図面に明記しましょう。

この4つは実際に確認申請で指摘されやすいポイント。図面チェックリストに入れておくと安心

まとめ|区画の種類で「煙を止めるか」を判断する

ダクトの防火区画貫通処理のポイントを整理します。

区画の種類ダンパー判断基準
面積区画FD(温度ヒューズ)煙の階間伝搬リスク低い
高層区画FD(温度ヒューズ)同上
竪穴区画SD / SFD(煙連動)煙突効果で煙が急速拡散
異種用途区画SD / SFD(煙連動)異用途間の煙流入防止

「煙が別の区画に流入するリスクがあるか?」が判断の分かれ目です。竪穴と異種用途は煙リスクが高いため煙連動が必須。面積区画と高層区画は同一階内の区画なので温度ヒューズで対応します。

迷ったときは安全側に倒してSFDを採用すれば間違いありません。

「煙が行くか行かないか」で考えればシンプル。この記事をブックマークしておけば現場で迷わない

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この記事を書いた人

現役20年の設備エンジニア。
「転⁠職⁠し⁠た⁠け⁠ど⁠残⁠っ⁠た」立場から発⁠信。

20〜30代の建設業エンジニアに、
「市⁠場⁠価⁠値⁠で⁠決⁠め⁠る⁠キ⁠ャ⁠リ⁠ア」を伝⁠授。

転職エージェント登録経験から、
「現⁠職⁠を⁠活⁠か⁠す⁠働⁠き⁠方」を発⁠信⁠中。

【保有資格】
・設⁠備⁠設⁠計⁠一⁠級⁠建⁠築⁠士
・建⁠築⁠設⁠備⁠士
・一⁠級⁠管⁠工⁠事⁠施⁠工⁠管⁠理⁠技⁠士
・一⁠級⁠電⁠気⁠工⁠事⁠施⁠工⁠管⁠理⁠技⁠士 ほか

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