「ここ、耐火ダクト要るんですか?」と聞かれて即答できず、恥ずかしい思いをしたことはありませんか?
図面チェックで「なんでこの区間から耐火?」と上司にツッコまれてフリーズした経験のある方も多いはず。
機械室は要る、専用機械室は不要、横引きは要る――条件が場面ごとに変わるので、丸暗記だと新しいパターンで毎回詰まります。
本記事では1級建築士+建築設備士+1級管工事施工管理技士を保持する現役設備設計者の視点から、定義→仕様の根拠→必要条件→設計判定フローの流れで一気に整理します。読み終われば「耐火ダクト要るかどうか」を即座に判定できるようになります。

耐火ダクトは「板厚+被覆材」のセットで成立します。どちらか欠けると認定を満たさないので、まず仕様の正体を押さえるのが最短ルートです。
耐火ダクトとは|定義と仕様の3パターン
耐火ダクトとは、火災時に内部の高温煙を漏らさず搬送できるよう、耐火被覆を施した鉄板ダクトのことです。主に排煙ダクトで用いられ、認定仕様は次の3パターン。
| パターン | 仕様 | 使われ方 |
|---|---|---|
| ①告示の例示仕様 | 板厚1.5mm以上の鉄板+ロックウール25mm以上被覆 | 標準仕様(実務の95%) |
| ②グラスウール被覆 | 板厚1.5mm以上+グラスウール25mm以上(密度24kg/m³以上) | 告示で同等仕様として許容 |
| ③消防個別承認 | 所轄消防署に事前承認を受けた工法 | 特殊用途・既存改修 |
現場で「耐火ダクト」と言えば、ほぼ①のロックウール25mm被覆を指します。通称「テンロク」(t1.6=1.6mmから来た呼び方)。これだけ覚えておけば実務の8割は通用します。
板厚 t1.6mm(実務の標準寸法)に由来。消防法の排煙設備技術基準(各自治体の運用指針)では「板厚1.5mm以上」が明記されており、JIS規格の流通板厚に合わせて 1.6mm(テンロク)が事実上の標準になっています。設計図では「t1.6+ロックウール25mm」と書いておくのが無難です。



「テンロク」は会話の中だけで使う現場用語。図面・仕様書には必ず「t1.6」と書きます。口頭で「ここテンロクで」と言われたら、t1.6+ロックウール25mmのことだと察して下さい。
なぜ「t1.6+ロックウール25mm」がデフォルトなのか
「ロックウール25mm」という数字には根拠があります。建築基準法 告示の例示仕様で、火炎に1時間以上耐え、内部温度を一定以下に保つ性能がこの仕様で確認されているからです。
- 1時間耐火:ロックウール25mm被覆で確保(最も一般的)
- 2時間耐火:50mm被覆 or 認定品でカバー(高層・地下用途)
- 板厚 1.5mm:火災時の変形・脱落を防ぐ最低限の構造強度
被覆材はロックウールとグラスウールの2種類が認められています。ロックウールは最高使用温度650℃・繊維の軟化変形温度700〜800℃、グラスウールは700℃で繊維形態を失い溶融。実用上の耐熱性能はロックウールが上で、ただしグラスウールは「密度24kg/m³以上」の条件付きで使用可能です。実務ではロックウールが流通量・施工性で選ばれることが多いのが実情です。
図面・仕様書には「t1.6+ロックウール25mm」と書けば足ります。被覆材メーカー(ニチアス・JFEロックファイバー・パラマウント硝子等)のカタログで不燃材料の確認だけしておけばOK。大臣認定品を使う場合のみ、認定書の添付が必要になります。
排煙ダクトで耐火が必要になる3つのケース


「排煙ダクト=全部耐火」ではありません。大原則は「排煙主ダクトは防火区画されたDS(ダクトスペース)内を縦に通す」こと。DS内ならDS自体が防火区画として機能するため耐火ダクトは不要です。
耐火が必要になるのは「DSから出る部分」「他設備と空気的につながる場所」。具体的には次の3ケースに集約されます。
| ケース | 条件 | 耐火 |
|---|---|---|
| ①機械室への接続部 | 排煙ファンが他設備(空調機等)と同居する機械室内のダクト | 必須 |
| ②DS外の横引き部分 | DSから出て他空間を横走させる主ダクト(要協議・望ましくない) | 必須 |
| ③排煙ファン専用機械室 | 排煙ファン単独の機械室内のダクト | 不要 |


判定の本質は「他系統と空気的につながる場所では耐火」。火災時に排煙ダクトが破断して炎・煙が漏れ出すと、隣接系統が排煙路でなく「延焼経路」になってしまうからです。③の「ファン専用機械室」は他設備と切り離されているので、ダクト周辺で漏煙が起きても被害が局所化されるため不要、というロジック。
排煙主ダクトの位置から逆算するのが最速です。
- そのダクト、DS(防火区画)の中? → YES:耐火不要 / NO:次へ
- 機械室の中? → 排煙ファン専用機械室なら不要/他設備同居なら耐火必須
- DS外で横引き? → 耐火必須(協議のうえ)



「他系統と空気的につながるか?」を問えば、3ケースは全部1つのルールに統一できます。暗記より理屈で覚えるのが応用力に直結します。
排煙ダクトの板厚規定|耐火と一緒に覚える
排煙ダクトの板厚は消防法の排煙設備技術基準で段階的に規定されています(450以下:0.8mm/〜1200:1.0mm/1200超:1.2mm)。ただし耐火ダクトを採用すれば、その規定はリセットされて最低 t1.5(実務 t1.6)に上書き。覚えるべきはこの2行だけです。
| 区分 | 板厚 |
|---|---|
| 耐火ダクト(〜2200mm) | 1.5mm以上(実務 t1.6) |
| 耐火ダクト(2200超) | 1.6mm以上 |
耐火ダクト採用=最低 t1.5(実務 t1.6)固定。寸法が小さくても薄板(0.8〜1.2mm)には戻せません。逆に大型ダクト(1200超)は通常排煙ダクトでも元から t1.2必要で、耐火ダクトのt1.5との差はわずか。設計ではこの「耐火=板厚アップのコスト」を頭に入れて経路を選びます。
まぎらわしい排煙ダクトの断熱措置
耐火ダクトと混同しがちなのが、排煙ダクトの断熱措置。排煙口から竪穴区画されたDS入口までの枝部分に、断熱仕様が要求されます。
耐火ダクトと違って板厚t1.5mm以上は求められません。被覆材だけ仕様を満たせばOKです。
- ロックウール 25mm以上
- グラスウール 25mm以上+密度24kg/m³以上



「耐火ダクト=鉄板+被覆」「断熱措置=被覆だけでOK」。被覆の厚みと密度の条件は同じなので、現場では両方ロックウール25mmで巻くことが多いです。







FD・SFDの使い分けは別記事で詳しく解説しています。耐火ダクトと組み合わせて理解すると、防火区画まわりのミスがなくなります。
設計でハマりやすい2つのトラブル
トラブル①:横引き距離を見落として後から耐火化
「主ダクトはDS内設置が原則」を忘れて横引きを多く取ると、後から全部耐火化が必要になりロックウール25mmの厚み分(=実質片側50mm増)でルートが収まらなくなります。天井ふところが厳しい計画では致命傷。排煙主ダクトは原則「縦に通す」と最初に決めて図面を引くのが鉄則です。
トラブル②:機械室の同居でファンを置いた後に発覚
排煙ファンと空調機を同じ機械室に置く計画は、機械室内のすべての排煙ダクトが耐火対象になります。発注後に気づくと追加でロックウール巻き工事が発生。設計初期で「排煙ファンは屋外設置か専用機械室にしておく」が鉄則です。
耐火ダクトは建築設備士の二次試験「設計製図」で頻出。排煙系統図に主ダクト経路を描く設問では、耐火ダクトの記号と凡例を必ず使います。1級管工事施工管理技士でも防火ダンパ・耐火被覆まわりの選択問題に絡みます。試験対策としても実務知識としても、ここを押さえると2倍美味しい論点です。
まとめ|判定フローを1枚で
本記事のポイントを整理します。
- 仕様:t1.6+ロックウール25mm(通称テンロク)が標準
- 判定軸:他系統と空気的につながる場所=耐火必須
- 3ケース:機械室同居/DS外横引き/専用機械室(不要)
- 板厚:耐火採用時は最低 t1.5(実務 t1.6)に引き上げ
- 注意点:横引き距離・機械室同居・認定書添付の3つで失敗しがち
「他系統と空気的につながるか?」――この1問さえ自分に投げかけられれば、耐火ダクトの判定はほぼ全部解けます。暗記より理屈で覚えるのが応用の効くやり方です。
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耐火ダクトは「設備設計の現場知識」と「資格試験の論点」が重なる領域。深掘りに役立つ関連記事を並べておきます。






















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