給水設備の設計概要を解説(給水方式、ポンプ選定、配管径の決定)

給水設備設計

この記事では実際に実務を行う際に必要となる項目に絞って簡潔に解説します。

内容は給排水衛生設備 計画設計の実務の知識 第4版をベースにしています。

目次

設計フロー

(実務の知識p.24)

STEP
1日使用水量の把握
  • 1日使用水量の算定
  • 1日給水量の算定
  • 時間平均給水量の算定
  • 時間最大給水量の算定
  • 瞬時最大給水量の算定
STEP
現場調査・関係官庁打ち合わせ
  • 既設給水管の有無および現状の引込口径の確認
  • 敷地周辺の水道本管の把握および引込可能口径の確認
  • 引込給水管材質制限の有無確認
  • 給水方式制限の有無確認
  • 供給可能水圧の確認
STEP
給水システム・給水方式の決定および必要スペースの確保
  • 給水システムの検討(井水・雨水・排水再利用の検討)
  • 給水方式の比較検討
  • ゾーニングの検討
  • 受水槽室、ポンプ室およびメイン管PSの確保
STEP
機器の仕様決定・配管ルートの確保
  • 給水機器の仕様決定
  • 配管ルートの検討と確定
  • すべてのPSの確定
  • 配管水平展開スペースの確定
STEP
給水必要箇所の確定および配管サイズの決定
  • 給水必要箇所の確認と確定
  • 配管径の決定

給水方式

給水方式は大きく以下の4つに別れます。(実務の知識p.31)

水道直結直圧方式

水道本管の圧力のみで給水する方式

水道直結増圧方式

水道本管の圧力では不足する場合に増圧ポンプで加圧して給水する方式

高置水槽方式

水道本管の水を受水槽にため揚水ポンプで屋上などに設置した高置水槽に送水。重力による圧力で給水する方式。

ポンプ直送方式

受水槽にためた水を加圧給水ポンプで給水する方式。ある程度の規模ではこの方式が一般的。

1日使用水量の算定

(実務の知識p.37)

設計に必要となる以下4つの給水量を算定します。官庁協議でも使用します。

1日使用水量:\(Q_d\)

\(Q_d=N \cdot q_d+q_e\) [L]

\(N\):人数、面積など

\(q_d\):単位給水量

\(q_e\):機器(工場の生産装置など)の水使用水量

\(N \cdot q_d\)は「建物種類別単位給水量・使用時間・人員」の表(実務の知識p.40)より算定します。

事務所に付属する社員食堂やテナントは別途加算が必要なので、1日何食提供予定なのかヒアリングが必要です。

建物種類単位給水量
(1日当たり)
使用時間
[h/日]
注記有効面積当たりの人員など備考
事務所60〜100L/人9在勤者1人当たり0.2人/m2社員食堂・テナントは別途加算
社員食堂25〜50L/食
80〜140L/食堂m2
10食堂面積には厨房面積を含める厨房で使用される水量のみ。便所などは別途加算
工場60〜100L/人操業時間+1在勤者1人当たり座作業0.3人/m2
立作業0.1人/m2
社員食堂・シャワーなどは別途加算
時間平均予想給水量:\(Q_h\)

\(Q_h=\frac{Q_d}{T}\) [L/h]

\(T\):1日の水使用時間

時間最大予想給水量:\(Q_m\)

\(Q_m=k_1 \cdot Q_h\) [L/h]

\(k_1\):1.5〜2.0程度

瞬時最大予想給水量:\(Q_p\)

\(Q_p=\frac{k_2 \cdot Q_h}{60}\) [L/min]

\(k_2\):3.0〜4.0

受水槽容量の算定

自治体によりますが、一般的には1日の使用水量の半分とすることが多いです。

\(V_s=\frac {Q_d}{2}\) [m3]

\(V_s\):受水槽の有効容量

給水ポンプ選定

(実務の知識p.56)

直送ポンプの揚水量は、瞬時最大予想給水量 \(Q_p\) 以上とし、揚程は以下の式により求めます。

\(H≥H_1+H_2+H_3\)

\(H\):直送ポンプの揚程 [m]

\(H_1\):直送ポンプの吸水面から最高位にある水栓または器具までの実高さに相当する水頭 [m]

\(H_2\):直送管路における量水器・直管・継手・弁類などによる摩擦損失水頭 [m]

\(H_3\):最高位における水栓または器具の必要圧力に相当する水頭 [m]

簡易的には、\(H_2\) は以下の計算で求められます。

最遠端の器具までの配管長[m]×単位圧損(安全側で0.4kPa/m)×2(直管+局部損失)×1.1(安全率)/9.8(kPa→m)

※もっと乱暴な求め方としては配管長[m]の1/10が摩擦損失としてポンプ揚程チェック時に使用

\(H_3\) は以下の表(実務の知識p.41)より求めます。

器具流水時必要圧力[kPa]
一般水栓30
自動水栓50
水石鹸つき自動給水60
大小便器洗浄弁70
タンクレス便器50
シャワー40〜160(形式により異なる)
ガス給湯器20(出湯量:3L/min程度)
〜80(出湯量:10L/min程度)

求めた揚水量と揚程からカタログのグラフを読み取り、ポンプを選定します。

テラルHPより

配管径の決定(器具給水負荷単位法)

器具給水負荷単位の表(実務の知識p.68)から各器具の負荷単位を求め、配管が受け持つ器具負荷単位数から瞬時流量を求めます。

瞬時流量はグラフから読み取りますが、ソフトを使って自動算定することもできます。

PipeCheckerPro HPより

図示記号

公共建築工事標準図により配管や器具の記号が定められています。

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この記事を書いた人

設備設計歴15年以上。
サラリーマンエンジニアとして日々奮闘中。
ニッチな設備業界を盛り上げるべく、情報を発信していきます。

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