【実際どうなの?】設計事務所の設備担当として働くということ

建築事務所

建物の快適性、安全性、そして利便性を確保するために不可欠な設備設計。あなたが日常的に利用するオフィスビルや商業施設、その内部の快適さを支えているのは、まさにこの設備設計の力です。しかし、多くの人々はその背後にどれほどの技術と努力が存在するのかを知りません。このギャップを埋めるため、本記事では設備設計の魅力とその重要性について詳しく解説します。

設備設計事務所は、施主の要望を反映させた基本計画から始まり、詳細な実施設計、そして工事監理に至るまで、一貫してプロジェクトを支えます。この一連のプロセスには、空調、電気、給排水といった専門的な知識と技術が必要です。また、資格取得の重要性や業界動向にも触れ、未経験からでも転職できる可能性や支援制度についても紹介します。

この記事では大規模な組織設計事務所から専門性の高い設備設計事務所、総合建設会社の設計部門まで、それぞれの特性や働き方の違いを解説します。これらの違いを理解することで、キャリア選択で間違えるリスクを低減することができます。

本記事を読むことで、設備設計の具体的な業務内容や資格、業界動向についての深い理解が得られ、今後のキャリアプランに大いに役立つでしょう。

ぜひ、設備設計の魅力とその奥深さを知り、新たな一歩を踏み出すヒントを見つけてください。

設備設計の業務内容

設備設計事務所では、以下のような仕事を行います。

基本計画

まず、施主(お客様)の要望をヒアリングします。例えば、「省エネ性能が高く、メンテナンスのしやすい建物にしたい。」といった具体的な要望を聞き取ります。そして、建物の用途や規模に応じた設備の基本方針を決定します。ここでは、どんなシステムが必要か、その大まかな設計を考えます。この段階では、建物の使用目的、規模、環境条件などを考慮し、必要なシステムの概要をまとめます。

基本設計

次に、基本的な設備の仕様を考えます。設備機器類をどこに配置するか、メイン配管はどのようにルーティングするかを決めます。そして、大まかな工事費を算出します。この段階での計画が、後の詳細設計に大きな影響を与えます。配管スペース・設備ピットの確保、電力や水の供給計画も含まれます。また、環境負荷を考慮したエネルギー効率の高いシステムの選定も行います。

実施設計

実際に工事ができるように詳細な設計図を作成します。電気の配線がどこを通るか、具体的にどのような部品を使うかなどを決めます。各種計算結果に基づいた機器の選定や配管ルートの決定など、細部にわたる設計を行います。この段階では、詳細な図面や仕様書を作成し、工事業者がそれに基づいて施工できるようにします。また、法規制や安全基準に適合するための調整も行います。

工事監理

工事が設計図通りに進んでいるかをチェックします。工事現場で実際に設計図を確認しながら、問題がないかを確認します。設計意図が確実に実現されるように監理します。この段階では、現場での進行状況を定期的にチェックし、設計図との整合性を確認します。また、工事中に発生する問題や変更要求に対応し、適切な修正を行います。

建築設計との違い

設備設計は、建築設計や構造設計と異なり、建物の内部環境の快適性と機能性を確保するための専門的な技術を要します。建築設計が建物の外観や構造を主に担当するのに対し、設備設計は空調、電気、給排水などの内部システムを担当します。建築設計が「外観・内観・構造をどうするか」を考えるのに対し、設備設計は「この建物に快適な空間をどうやって提供するか」を考えます。また、設備設計では環境負荷の低減や建物を使う人の健康への配慮も重要な課題となります。

関連資格

資格

設備設計を行うにあたり、以下の資格を持っていると有利です。

取得のハードルが高いものが多いですが、実務を積みながら時間をかけて徐々に取得していくといったタイプのものですので、未経験で持っていないという方でも問題ありません。

記載した順に取得のハードルが上がっていくイメージです。

消防設備士(甲種)

消防設備士(甲種)は、消防法に基づく設備の設計、施工、保守点検を行うための資格です。この資格を持つことで、建物の安全性を高めるための消防設備計画において専門的な知識と技術を有していることの証明になります。

建築設備士

建築設備士は、建築物の電気、空調、給排水衛生設備の設計・施工監理を行う資格です。建物全体の設備設計における専門知識を活かし、効率的かつ効果的な設備配置を行えます。設備間の連携や調整が必要なプロジェクトで、総合的な管理能力を発揮できプロジェクトをスムーズに進めることができるようになります。

電験3種

電験3種(第三種電気主任技術者)は、電気設備の保安監督を行うための資格です。設備設計において、この資格を持つことで電力供給システムの設計と保守管理における専門的な知識を活かせます。電気設備の安全性と効率性を確保するための重要な役割を担うことができます。

一級建築士

一級建築士は、建築全般の設計および施工管理に関する資格であり、建物の基本的な設計を行います。この資格を持つことで、建物全体の構造や法規制に精通し、設備設計と建築設計の連携をスムーズに行えます。

設備設計一級建築士

設備設計一級建築士は、設備設計に特化した資格で、特に高度な設備技術を駆使して複雑なシステムの設計を行う能力を有していることの証明となります。また、法的にも階数が3以上で床面積の合計が5,000㎡を超える建築物の設備設計については、設備設計一級建築士の関与が必須となります。

この資格を持つことで、空調、電気、給排水などのシステム設計において高度な専門知識を発揮し、複雑なプロジェクトでのリーダーシップにより、顧客からの信頼を得ることができます。

技術士

技術士は、特定の技術分野における高度な専門知識と実践能力を証明する資格です。設備設計において、この資格を持つことで、技術的な課題に対して高いレベルで対応できると認められます。技術士の資格を持つ設備設計者は、最新技術の導入や技術的な問題解決においてリーダーシップを発揮し、業界内で高く評価されます。

設備設計事務所の種類と特徴

設備設計事務所は大きく3種類に分けられます:

組織設計事務所

多様な設計プロジェクトを手掛ける大規模な事務所で、複数の専門家が協力してプロジェクトを進行します。例えば、建築設計、構造設計、設備設計が一体となってプロジェクトを進めます。大規模なプロジェクトでは、各分野の専門家が連携して総合的な設計を行います。

設備設計事務所

設備設計に特化した事務所で、大手組織設計事務所に比べると規模は小さいですがクライアントのニーズに応じた高度で専門的な設計を行います。設備設計事務所は建築設計事務所や構造設計事務所と協力してプロジェクトを進めます。

総合建設会社(ゼネコン)設計部

建設全般をカバーする大手企業の設計部門で、建築全体のプロジェクトを統括します。ビルの設計から施工まで一貫して行うことができるため効率的かつ統合的なアプローチで建物の完成まで導きます。

各設計事務所の特徴と年収

代表的な設計事務所の特徴と年収をまとめると以下のようになります。

設計事務所特徴平均年収
森村設計日本を代表する総合設計事務所。都市開発や大型施設の設備設計を手掛ける。最先端の技術と持続可能な設計を重視。600万円から800万円程度
建築設備設計研究所設備設計に特化。空調・電気・衛生設備の設計で強い実績。最新の技術を取り入れた設計を行う。550万円から750万円程度
蒼設備設計設備設計に特化。環境負荷を最小限に抑える持続可能な設計に注力。省エネ技術や再生可能エネルギーの活用に注力。500万円から700万円程度
アラップ(Arup)世界的に有名な多国籍設計事務所。持続可能性と革新性を重視し、エネルギー効率の高いシステムや環境に配慮した設計を提供。700万円から1000万円程度
日建設計日本を代表する設計事務所。国内外で多くのプロジェクトを手掛ける。持続可能な都市づくりを推進。650万円から900万円程度
三菱地所設計三菱地所グループの一員。都市開発や再開発プロジェクトに強み。持続可能性とデザイン性を兼ね備えたプロジェクトが特徴。600万円から850万円程度
日本設計総合設計事務所として、多くの実績を持つ。高度な技術力とデザイン性を兼ね備えた設計を提供。600万円から850万円程度

転職にあたっては転職エージェントの利用をおすすめします。上記のような求人情報が多数あります。

まとめ

設備設計は、快適で安全な建物を実現するために不可欠な分野です。しかし、多くの人はその重要性や具体的な業務内容について十分に理解していません。本記事では、設備設計の基礎から専門知識、業界動向まで幅広く解説しました。

設備設計事務所は、施主の要望に応じた基本計画から詳細設計、工事監理まで一貫してプロジェクトを支えます。空調や電気、給排水などの専門的な知識が必要で、資格取得も重要です。未経験者にもチャンスがあり、支援制度も整っています。

大規模な組織設計事務所から専門的な設備設計事務所まで、働き方の違いやそれぞれの特性も理解することで、キャリア選択のリスクを減らせます。設備設計の魅力と奥深さを知り、新たなキャリアの一歩を踏み出すヒントを見つけてください。

設備業界全体についてはこちらの記事で解説しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

設備設計歴15年以上。
サラリーマンエンジニアとして日々奮闘中。
ニッチな設備業界を盛り上げるべく、情報を発信していきます。

コメント

コメントする

目次