圧空システムの設計を任されたけど、何から手をつければいいかわからない。そんな経験はありませんか?
この記事は圧縮空気配管の設計手順を初めて担当する設備設計者向けに、空気消費量の算出からコンプレッサー選定、配管サイズの決定まで一連の流れを解説しています。
- 圧空設計を任されたが、設計フローの全体像がわからない
- コンプレッサーの種類が多くて、どれを選べばいいか迷う
- 配管サイズの決め方や圧力損失の計算に自信がない
筆者は建築設備士として病院や研究施設の圧空設計を実務で行ってきました。この記事では設計フローをStep形式で順番に追えるように整理しています。
- 圧空システムの構成機器と役割がわかる
- 設計手順を5つのStepで順番に進められる
- コンプレッサー・エアタンク・ドライヤー・フィルターの選定根拠を説明できるようになる
読み終えれば、圧空システムの設計フローを一通り把握した上で、機器メーカーや施工業者と設計意図を共有できるようになります。
圧空システムの全体像|構成機器と役割を押さえる

圧空システムは、空気を圧縮して各機器に供給する設備です。建築設備では病院の医療用圧縮空気、研究施設の実験用エア、工場の生産ライン向けなど用途が多岐にわたります。
システムは大きく5つの構成機器で成り立っています。
| 構成機器 | 役割 | 設計で決めること |
|---|---|---|
| コンプレッサー | 空気を圧縮して吐出する | 種類・台数・吐出圧力・吐出量 |
| エアタンク | 圧縮空気を貯留し圧力変動を吸収する | 容量 |
| エアドライヤー | 圧縮空気中の水分を除去する | 種類・処理能力 |
| フィルター | 油分・粉塵を除去する | 清浄度クラス・設置位置 |
| 配管・バルブ | 圧縮空気を各末端まで搬送する | 管径・材質・レイアウト |
設計の基本的な流れは「空気をどれだけ使うか→どう作るか→どう綺麗にするか→どう届けるか」の順です。水道で例えるなら、コンプレッサーがポンプ、エアタンクが受水槽、ドライヤー・フィルターが浄水器、配管が給水管にあたります。

圧空システムの設計は「消費量→機器選定→配管」の順で進める。この流れを押さえておけば、途中で迷子にならない。
Step1:空気消費量を算出する


コンプレッサーの容量を決めるために、まずシステム全体で使う空気の量を把握します。消費量の算出が設計の出発点です。
各機器の消費量を拾う
圧縮空気を使用する機器をすべてリストアップし、カタログや仕様書から1台あたりの空気消費量(NL/min)を拾います。
- 医療用:人工呼吸器、手術用ドリル、歯科ユニット
- 研究施設用:クリーンベンチ、分析機器のパージ
- 工場用:エアシリンダー、エアブロー、塗装ガン
- 建築設備:自動制御用(ダンパー・バルブの駆動)
消費量がカタログに載っていない場合は、メーカーに問い合わせるか、類似機器の値を参考にします。
同時使用率を考慮する
すべての機器が同時に最大能力で動くことは通常ありません。用途に応じて同時使用率を設定します。
| 用途 | 同時使用率の目安 |
|---|---|
| 自動制御用(ダンパー・バルブ) | 50〜70% |
| 工場の生産ライン | 60〜80% |
| 医療用(病院) | 70〜100% |
医療用は安全側に振るため同時使用率を高く設定します。逆に自動制御用はダンパーの開閉が常時ではないため低めに設定できます。
余裕率を加算する
将来の増設や配管からの漏れを考慮して、算出した消費量に余裕率を掛けます。
必要空気量 = 各機器の消費量合計 × 同時使用率 × 余裕率(1.2〜1.5)
余裕率は一般的に1.2〜1.5倍が目安です。増設の可能性が低い施設では1.2倍、将来増設が見込まれる工場では1.5倍を採用します。



消費量の算出は「拾う→同時使用率を掛ける→余裕を見る」の3ステップ。ここが甘いとコンプレッサーが足りなくなる。
Step2:コンプレッサーを選定する


必要空気量が決まったら、それを賄えるコンプレッサーを選びます。種類・台数・圧力の3つを決めるのがこのステップです。
コンプレッサーの種類と特徴
建築設備で使われるコンプレッサーは主に3種類です。
| 種類 | 特徴 | 適する用途 |
|---|---|---|
| レシプロ(往復動) | 構造がシンプルで安価 脈動が大きい | 小規模・間欠使用 |
| スクリュー(回転) | 連続運転に強く大容量対応 脈動が小さい | 中〜大規模・連続使用 |
| スクロール(渦巻) | 低騒音・オイルフリー対応 小容量向き | 病院・クリーンルーム |
病院の医療用圧縮空気にはオイルフリー仕様が必須です。スクロール式はオイルフリーで低騒音のため、病院やクリーンルームで多く採用されています。
台数制御の考え方
コンプレッサーは1台運転ではなく、複数台構成にするのが基本です。
- 冗長性の確保:1台が故障しても残りで運転を継続できる
- 負荷追従:使用量が少ない時間帯は運転台数を減らして省エネ
- メンテナンス:1台を停止しても供給を止めずに点検できる
台数構成は「N+1」が一般的です。必要容量をN台で賄い、予備として1台追加します。たとえば必要空気量が3,000 NL/minなら、1,500 NL/min × 2台+予備1台の計3台構成とします。
吐出圧力の設定
末端機器が必要とする圧力に、途中の配管やフィルターでの圧力損失を加算してコンプレッサーの吐出圧力を決めます。
コンプレッサー吐出圧力 = 末端必要圧力 + 配管圧力損失 + フィルター・ドライヤー圧力損失
一般的な建築設備では0.7 MPaが標準的な吐出圧力です。末端で0.5 MPa必要な場合、配管やフィルターでの損失を0.1〜0.2 MPa程度見込んで設定します。



コンプレッサー選定は「種類→台数→圧力」の順。病院はオイルフリー必須、台数はN+1構成が基本。
Step3:エアタンクの容量を決める


エアタンクはコンプレッサーと末端機器の間に設置し、圧力変動を吸収するバッファです。適切な容量を選ばないと圧力が安定しません。
エアタンクの3つの役割
- 脈動防止:レシプロコンプレッサーの吐出圧力の脈動を平滑化する
- バッファ(蓄圧):瞬間的な大量消費に対応し、圧力低下を防ぐ
- コンプレッサーの保護:発停頻度を抑えてモーターの負担を軽減する
容量算定の目安
エアタンクの容量はコンプレッサーの種類によって目安が異なります。
| コンプレッサー種類 | タンク容量の目安 |
|---|---|
| レシプロ | 吐出量の25%以上 |
| スクリュー | 吐出量の15〜20% |
たとえばスクリューコンプレッサーの吐出量が2,000 NL/minの場合、タンク容量は2,000 × 0.2 = 400 L以上が目安です。
瞬間的に大量の空気を使う末端機器がある場合は、末端直近にサブタンク(補助タンク)を設置して対応します。メインタンクだけでは圧力降下が大きくなるためです。



タンク容量の目安はレシプロ25%、スクリュー15〜20%。瞬間消費が大きい末端にはサブタンクを追加する。
Step4:ドライヤー・フィルターを選定する


圧縮空気には水分・油分・粉塵が含まれています。これらを除去しないと配管の腐食や末端機器の故障につながります。
エアドライヤーの種類と使い分け
圧縮空気中の水分を除去するのがエアドライヤーです。主に2種類あります。
| 種類 | 原理 | 露点温度 | 適する用途 |
|---|---|---|---|
| 冷凍式 | 圧縮空気を冷却して水分を凝縮・除去 | 圧力下露点 約+3〜10℃ (大気圧下露点 約-20℃) | 一般空調・工場 |
| 吸着式(デシカント) | 乾燥剤に水分を吸着させて除去 | 大気圧下露点 -40〜-70℃ | 医療用・クリーンルーム・屋外配管 |
一般的な建築設備では冷凍式で十分です。ただし、屋外を経由する配管がある場合は凍結防止のために吸着式を採用します。医療用やクリーンルーム向けも吸着式が必要です。
フィルターと清浄度クラスの考え方
フィルターは用途に応じて段階的に設置します。ISO 8573-1で規定される清浄度クラスに基づいて選定します。
- メインフィルター:コンプレッサー直後に設置。粗い粒子と液滴を除去
- ミストフィルター:ドライヤー後に設置。油ミストを除去
- 活性炭フィルター:臭気や油蒸気を除去。医療用・食品用で使用
- 末端フィルター(FRL):各機器の直前に設置。最終的な異物除去と圧力調整
フィルターは段数を増やすほど清浄度が上がりますが、同時に圧力損失も増えます。用途に必要な清浄度クラスを確認し、過剰なフィルター設置にならないよう注意してください。



ドライヤーは冷凍式が基本、凍結リスクや医療用は吸着式。フィルターは必要な清浄度に合わせて段階的に設置する。
Step5:配管サイズを決定する


配管は圧縮空気を末端まで届ける搬送路です。管径が小さすぎると圧力損失が大きくなり、末端で必要な圧力を確保できなくなります。
配管径の決め方
配管径は「流量・配管長さ・許容圧力損失」の3条件から決定します。
メーカーが公開している配管径選定表を使うのが実務では一般的です。アネスト岩田やアトラスコプコなどの主要メーカーが、流量と配管長さから推奨管径を示すチャートを提供しています。
許容圧力損失の目安は、システム全体で吐出圧力の5%以内が推奨値です。0.7 MPaのシステムなら0.035 MPa以内に抑えます。
配管レイアウト|リング配管と枝管配管
配管レイアウトは大きく2つのパターンがあります。
| レイアウト | 特徴 | 適する場面 |
|---|---|---|
| リング配管 | 配管をループ状に接続 圧力が均一になりやすい | 使用箇所が多い・広い建物 |
| 枝管配管 | メインヘッダーから分岐 シンプルで施工しやすい | 使用箇所が少ない・直線的な配置 |
使用箇所が多い工場や大きな建物ではリング配管が有利です。複数経路から空気が供給されるため、1箇所で大量に使っても他の末端への圧力影響が小さくなります。
配管材質の選定
圧空配管に使われる主な材質は以下の通りです。
| 材質 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| SGP(配管用炭素鋼鋼管) | 安価で入手しやすい | 内面が腐食しやすい。ドレン管理が重要 |
| SUS(ステンレス鋼管) | 耐食性が高い | コストが高い。医療用・クリーンルーム向き |
| アルミ配管 | 軽量で施工性が良い。内面が滑らかで圧力損失が小さい | 専用継手が必要 |
| 樹脂管(ナイロン・ウレタン) | 末端の取り出し配管に使用 | 主管には不向き |
近年はアルミ配管の採用が増えています。内面が腐食しないためドレン管理の手間が減り、軽量で施工性も良いのが理由です。
ドレン対策
圧縮空気が冷えると水分がドレンとして配管内に溜まります。ドレンを放置すると配管の腐食や末端機器の故障につながるため、対策が必要です。
- 配管勾配:横引き管には1/200〜1/100の下り勾配をつける
- ドレンセパレーター:主要な分岐点に設置して水分を分離
- オートドレン:配管の低い位置に自動排水弁を設置
- 枝管の取り出し方向:主管の上側から分岐して取り出す(下側から取るとドレンが末端に流れる)



配管設計は「管径→レイアウト→材質→ドレン対策」の順で決める。枝管は主管の上側から取り出すのが鉄則。
まとめ|圧空設計は5つのStepで進める
圧空システムの設計手順を5つのStepで解説しました。
- Step1:各機器の空気消費量を拾い、同時使用率と余裕率を掛けて必要空気量を算出
- Step2:用途に合ったコンプレッサーの種類を選び、N+1の台数構成と吐出圧力を決定
- Step3:コンプレッサー種類に応じたエアタンク容量を設定し、必要に応じてサブタンクを追加
- Step4:ドライヤーは冷凍式を基本に凍結リスクや医療用途で吸着式を選択。フィルターは清浄度クラスに合わせて段階的に配置
- Step5:流量と配管長さから管径を決め、レイアウト・材質・ドレン対策を設計
設計の全体像を掴んでから各Stepを進めることで、手戻りの少ない設計ができます。



圧空設計は「消費量→コンプレッサー→タンク→清浄化→配管」の順で進めれば迷わない。困ったらメーカーの技術相談を活用しよう。













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