最近何かと耳にすることが多くなったビルマルエアコンの冷媒規制。
日本冷凍工業会のガイドブック「微燃性(A2L)冷媒を使用したビルマルチエアコンを安全にご使用いただくために」の内容を簡潔にまとめました。
そもそもなぜ冷媒を変える必要があるのか?
現行のビルマルチエアコンではR410Aという冷媒が多く使用されています。
この冷媒はオゾン層破壊係数は低いのですがGWP(地球温暖化係数)が高く、近年問題視されてきました。
2019年、「フロン排出抑制法」が改正されました。この中で製造業者に対して低GWP冷媒を採用する指定製品化を規定。家庭用や店舗用パッケージエアコンに加えて、ビル用マルチエアコンも指定製品化され、2025年度より規制が開始されます。
何に変わるのか?
エアコンメーカー各社は低GWPであるR32への移行を前提に製品開発を進めています。
R32は対R410Aで約76%、温暖化への影響を少なくすることができます。
https://www.daikin.co.jp/csr/information/influence/hfc32
デメリットは?
デメリットもあります。
冷媒は低GWPになるほど燃焼性が高くなり、R32は燃焼性クラスA2L(微燃性)に分類され、安全に使用する方法が必要になります。
そのため産官学一体となり微燃性冷媒のリスクアセスメントを行われました。アセスメントでは夜間に換気を停止して喫煙したシビアケースにおいて着火リスクを超えることがわかり、その結果を踏まえてガイドライン「JRA GL-16」が制定されました。
JRA GL-16の概要
微燃性冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏洩時の安全確保のための施設ガイドラインであり、充填された冷媒の漏洩に対する安全確保のための空調システム選定と施工および換気などの施工側の対応について規定しています。
①冷媒量
以下の式計算される冷媒漏洩時最大濃度がLFLの1/4を超える場合、各部屋ごとに安全対策が必要になります。
②漏洩高さの求め方
漏洩高さは「床面から冷媒漏洩想定箇所までの高さ」です。
具体的には以下の図の通りです。
③安全対策
最大濃度がLFLの1/4を超える場合、各部屋ごとに以下の安全対策が必要となります。
①検知器と警報装置の設置
②換気装置もしくは安全遮断弁のいずれかの設置
検知器・警報装置
- 警報装置は検知器からの冷媒漏洩信号を受け、ランプの点灯又は点滅と同時に警告音を発します。
- 自主避難できない人々がいる施設又は、不特定多数の人々が自由に出入りできる施設の場合は、監視室に接点などにより警報を出す必要があります。
安全遮断弁
- 安全遮断弁は、遮断後最大冷媒濃度がLFLの1/2以下となるよう遮断する冷媒回路中に設置が必要。
- 検知器の信号によって冷媒回路を遮断します。
- 設置位置は対象となる室内の外側で、点検可能な位置に設置。
機械換気装置
- 機械換気設備は原則として室内機の使用/不使用、居室への在室/不在にかかわらず、以下のいずれかに対応する必要があります。
- 24時間運転させ、その際には管理責任者以外のものが停止したり、メンテナンス以外は停止されないようにしなければならない
- 冷媒漏洩検知器によって冷媒漏洩時に自動的に作動させなければならない。
- 設備の換気能力は以下式の換気回数以上を満足させる必要があります。
- 外気処理空気を室内機に取り込む場合については、取り込む外気量を含めて換気回数を決定することが可能です。
- 換気の給気開口は室内の上部に設け、排気開口は可能な限り低く(床面から30cm以下)する必要があります。
- 排気開口高さを漏洩高さ以下の高さとする場合は、給気開口を室の天井面又は床面近くに設け、排気開口を室の天井面に設置することが可能です。
④安全対策要否判定
安全対策の要否判定フローチャートを以下に示します。
要否判定は、室内、室外、地下室最下層階で判定する必要があります。
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