浄化槽について

浄化槽

普段業務を行う中で、浄化槽については専門業者さんにおまかせ!という方も多いのではないでしょうか。

私もそういった中の一人ではあるのですが、申請業務や建築・他設備との取り合いなど業者さんに完全におまかせ!とはいかないのが浄化槽。

この記事では浄化槽の基本的な概要と計画の注意点について簡単にまとめていますので、専門業者さんとのやりとりや関係者との調整がスムーズにできるようになるかと思います。

目次

浄化槽とは

そもそも浄化槽って何?

下水道が整備されていない地域では生活排水を海や川に放流しています。

もちろん、そのまま放流はできないので浄化槽できれいにしてから放流する必要があります。

H27年時点で下水道普及率は78%なので、残り22%は浄化槽を使用していることになります。

浄化槽には大きく分けて以下の2種類があります。

  • 便所から排出されるし尿だけを処理する「単独浄化槽」
  • し尿と台所・洗面・浴室からの雑排水も合わせて処理する「合併処理浄化槽」

現在設置が許可されているのは「合併処理浄化槽」のみです。

みなし浄化槽

「単独浄化槽」はもう使えないの?

すでに設置されている浄化槽は「みなし浄化槽」として継続利用は認められています。

ただ国としては合併処理浄化槽へ切り替えてもらいたいので、助成金などの施策がとられています。

浄化槽に関する法律

浄化槽に関連する法律は「建築基準法」「浄化槽法」「水濁法」「湖沼法」があります。

各法規で関連する部位を抽出してまとめたものが以下の表になります。

法の略称排水規制
建築基準法し尿浄化槽の区域、処理対象人員の区分に応じて定められた性能を有していること
浄化槽法BODの除去率が90%以上、放流水のBODが20mg/L以下
水濁法処理対象人員501人以上の浄化槽は「特定施設」に指定されている

「特定施設」には環境省令で定められる「排水基準(一律基準)」が適用される

都道府県は「上乗せ排水基準」を定めることができる。指定地域では「水質総量規制」が適用される。
湖沼法「指定湖沼」「指定地域」では規制基準が定められる。

処理対象人員501人以上の浄化槽は「湖沼特定施設」に指定され規制の対象となる

処理対象人員201人~500人のし尿浄化槽は「みなし特定施設」として規制の対象となる

「総量削減指定湖沼」「総量削減指定地域」では「水質総量規制」が適用される
“給排水衛生設備計画設計の実務の知識”より抜粋

いろんな法律が絡むんだね

水濁法の「特定施設」は忘れがちなので要注意です

浄化槽のしくみ

浄化槽は、主に3つの部分から構成されています。

  1. 第一槽(沈殿槽): 下水が最初に入る部分で、大きな固形物や油脂などが沈殿します。ここでの沈殿によって水の流れが穏やかになり、後続の処理工程がスムーズに行われます。
  2. 第二槽(好気槽/ばっ気槽): 沈殿した水が次に入る部分で、好気性の微生物によって有機物が分解されます。この過程で水中の有機物が分解され、汚水が浄化されます。
  3. 第三槽(沈殿槽または濾過槽): 第二槽で処理された水がここに入り、残っている微小な固形物や微生物が沈殿または濾過されます。最終的に、浄化された水が外部に放出されます。

浄化槽の計画・設計

計画対象地域の把握

計画地に下水道が整備されているかどうかをまず確認します。

下水道がない場合に浄化槽を計画します。

将来的に下水道が敷設される場合はどうするの?

恒久施設として設置するのか、一時的な施設として将来の下水道切替後に蓄熱槽や雨水貯留槽等として転用するのかの検討が必要となります。

浄化槽の要求性能

建築基準法で定めるどの地域に該当するかにより、浄化槽の要求性能が決まります。

第三十二条 尿浄化槽の法第三十一条第二項の政令で定める技術的基準及び合併処理浄化槽(尿と併せて雑排水を処理する浄化槽をいう。以下同じ。)について法第三十六条の規定により定めるべき構造に関する技術的基準のうち処理性能に関するもの(以下「汚物処理性能に関する技術的基準」と総称する。)は、次のとおりとする。

 通常の使用状態において、次の表に掲げる区域及び処理対象人員の区分に応じ、それぞれ同表に定める性能を有するものであること。

尿浄化槽又は合併処理浄化槽を設ける区域処理対象人員(単位 人)性能
生物化学的酸素要求量の除去率(単位 パーセント)尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水の生物化学的酸素要求量(単位 一リットルにつきミリグラム)
特定行政庁が衛生上特に支障があると認めて規則で指定する区域五〇以下六五以上九〇以下
五一以上
五〇〇以下
七〇以上六〇以下
五〇一以上八五以上三〇以下
特定行政庁が衛生上特に支障がないと認めて規則で指定する区域 五五以上一二〇以下
その他の区域五〇〇以下六五以上九〇以下
五〇一以上
二、〇〇〇以下
七〇以上六〇以下
二、〇〇一以上八五以上三〇以下
一 この表における処理対象人員の算定は、国土交通大臣が定める方法により行うものとする。
二 この表において、生物化学的酸素要求量の除去率とは、尿浄化槽又は合併処理浄化槽への流入水の生物化学的酸素要求量の数値から尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水の生物化学的酸素要求量の数値を減じた数値を尿浄化槽又は合併処理浄化槽への流入水の生物化学的酸素要求量の数値で除して得た割合をいうものとする。

 放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325CO0000000338

基準法のほか水濁法の上乗せ基準や湖沼法の窒素、リン等の規制についても確認する必要があります。

流入汚水量・水質

浄化槽の計画に必要となる排水水質項目は以下の通りです。

  • 処理対象人員
  • 汚水量(一日あたり)
  • BOD濃度(BOD:生物化学的酸素要求量。汚濁度の指標)
  • T-N/T-P濃度(トータル窒素・リン濃度)

どうやって算定するの?

建物用途別のJIS基準があります。既存建物のデータや類似建物のデータを使用することもあります。

建築物の用途別によるし尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A3302-2000)

類似用途別番号建築用途処理対象人員算定単位当たりの汚水量及びBOD濃度 参考値処理対象人員(n)1人当たりの汚水量及びBOD量参考値排水時間(参考)
算定式算定単位汚水量BOD (mg/L)水量負荷算定 (L/人・日)BOD負荷算定 (g/人・日)
1集会場施設関係公会堂・集会場・劇場・映画館・演芸場n = 0.08An:人員(人) A:延べ面積(m2)16(L/m2・日)150〇(200)(30)公会堂・集会場 8 劇場・演芸場 10 映画館 12
競輪場・競馬場・競艇場n = 16Cn:人員(人) C(注1):総便器数(個)2,400(L/個・日)260(150)〇(40)10
観覧場・体育館n = 0.065An:人員(人) A:延べ面積(m2)10(L/m2・日)260(155)〇(40)15
フジクリーンHPより抜粋
https://www.fujiclean.co.jp/product/jokaso/calculationtable.html

処理対象人員って実際の収容人員とかなり違うんだけど・・・

あくまで浄化槽計画用人員なので建物の定員とは異なります

人員算定表の人員と実運用上の人員の乖離がある場合には、実情にあわせて算定人員を増減することができるとされています。

計画上の留意点

浄化槽を計画していく上での注意点を列記します。

  1. 排水系統、流入・放流の位置・経路
  2. 流入・放流管底の深さ
  3. 地盤の状況、地耐力、凍結深度、地下水位
  4. 槽、ブロアの設置位置・スペース(地上設置、地下埋設、地下階設置)
  5. 機器搬入・搬出、保守管理スペースの確保
  6. 周辺環境への影響(臭気、騒音、振動、景観)
  7. 気象条件(気温、水温、積雪量)
  8. 汚泥の処分方法、バキューム車の進入スペース
  9. 槽上部の利用方法(庭、駐車場など)
  10. 付帯設備(電気・照明・換気)
  11. 施工(水平確保、不等沈下防止、地下水による浮上防止)
  12. 工期
  13. 維持管理の容易性
  14. 維持管理体制(委託管理等)

色々と気にする必要があるんだね

浄化槽について一通り知りたいという場合には、実務の知識(衛生)の中の「排水処理・再利用設備」の章にまとめられていますので、こちらを読むことをおすすめします。

おすすめ書籍についてこちらの記事で紹介しています。

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まとめ

浄化槽は、地域の環境保全に重要な役割を果たしています。

正しい運用と定期的なメンテナンスを行うことで、浄化槽の性能を維持し、環境に負荷をかけない排水処理を実現することができます。

定期的な清掃や点検に支障がないよう、専門業者さんと協力して計画を進めましょう。

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この記事を書いた人

設備設計歴15年以上。
サラリーマンエンジニアとして日々奮闘中。
ニッチな設備業界を盛り上げるべく、情報を発信していきます。

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