空調用熱交換器(プレート式・多管式)の概要と選定方法を解説

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熱交換器は、エネルギーの効率的な利用を実現するために重要な機器であり、さまざまな産業分野で利用されています。

建物の空調利用にとどまらず、プラント工場での冷却や加熱、発電所での熱回収、食品加工の過程での冷却など、熱交換器の活用範囲は非常に広いです。

本記事では、熱交換器の基本的な知識から、それぞれの種類、特徴、選定方法について解説します。

目次

熱交換器の基本知識

熱交換器とは

熱交換器は、高温の流体から低温の流体へ効率的に熱を移動させる装置です。

冷暖房設備、プロセス冷却、発電、廃熱の回収など、さまざまな産業において不可欠な存在となっています。

一般的に、熱交換器は2種類の流体が物理的に分離された状態で、流体が直接混ざることなく熱だけが移動する仕組みです。

熱交換の原理

熱交換器は、基本的に以下の2つの熱伝達の仕組みに基づいています。

伝導

熱が物質の分子間で直接的に移動する現象です。金属などの高伝導材料を使用することで、熱の伝導効率が向上します。

伝導は、流体と固体の接触面での熱移動や、固体内部での熱伝達の際に重要な役割を果たします。

対流

流体が移動することによって熱が運ばれる現象です。対流は自然対流(温度差による密度の変化)と強制対流(ポンプやファンなどによって引き起こされる流れ)に分けられます。

強制対流は、冷却水や空気を循環させて効率的に熱を除去する際に多用されます。

熱交換器の用途と利用例

熱交換器の用途は多岐にわたります。具体的な利用例としては次の通りです。

工業用プロセス

石油化学プラントや発電所での冷却・加熱プロセスに使用します。

熱交換器を使うことで高温のガスや液体を安全に冷却・加熱することができ、プロセスの安定性を確保します。

食品・飲料産業

牛乳やビールのパスチャライゼーション(低温殺菌)や飲料の急速冷却に活用されます。

例えば牛乳を72℃で15秒間加熱する「高温短時間加熱法(HTST)」では、プレート式熱交換器が用いられます。

プレート間を牛乳が流れる際、間接的に加熱され、効果的に殺菌が行われます。

空調・冷暖房

冷却塔や暖房設備での熱回収や冷却プロセスで使用します。

ビルや工場の空調システムで熱交換器を利用することで、エネルギーの再利用が可能となり、コスト削減と環境負荷の低減が図られます。

また、最近では、地中熱や太陽熱を利用した熱交換器の応用も増えており、再生可能エネルギーを活用することで持続可能なエネルギー利用に貢献しています。

熱交換器の種類と特長

多管式熱交換器(シェル&チューブ式)

多管式熱交換器(シェル&チューブ式)は、最も古典的で広く使用されている熱交換器の一つです。

その名の通り、複数の管(チューブ)がシェル(外筒)内に配置されており、異なる流体がチューブとシェルの間を流れることで熱交換が行われます。

食品加工ではスープやシロップなどの粘度の高い液体の加熱・冷却に利用されています。

多管式熱交換器の種類

固定管板式

管板がシェルに固定されており、構造がシンプルでコストが低いのが特徴です。ただし、熱膨張に対応する能力が低く、両流体の温度差が大きい場合には使用が制限されます。このため、特に温度変化が少ないプロセスに適しています。

Uチューブ式

チューブがU字型に曲がっており、熱膨張に柔軟に対応できます。清掃が難しいというデメリットがありますが、広範な温度範囲で使用可能です。

遊動頭(フローティングヘッド)式

チューブ束の一端が自由に動けるため、熱膨張や収縮に対応しやすく、メンテナンスが容易です。特に高温と低温の温度差が大きいプロセスにおいては、熱応力による損傷を防ぐためにこの設計が用いられます。

多管式熱交換器の特徴

耐圧性と耐久性に優れる

シェル(外側の容器)とチューブ(内部の管)は腐食に強いステンレスなどの金属材料で作られており、高温・高圧にも耐えることができます。

また、熱交換器内部では高温による熱膨張が発生しますが、膨張継手によって膨張や収縮による損傷に対応できる構造となっています。

メンテナンス性に優れる

多管式熱交換器は内部のチューブをシェルから引き出して分解が可能なため、内部の汚れやスケール除去のための清掃・修理を用意に行うことができます。

幅広い用途に対応できる

腐食性の流体が使用される場合でもチタンなど適切な耐食性材料を選ぶことで、様々な用途に使用することができるため、化学プラントや発電所など多くの産業で活用されています。

プレート式熱交換器

プレート式熱交換器は、複数の薄いプレートを積み重ねて形成されており、流体はプレート間を流れます。シール用ガスケットをセットし、ガイドバーにプレートを積層し締め付けボルトで固定します。

プレート枚数を調整することで伝熱面積を自由に調整することができ、効率的に熱交換を行うことができます。

プレート式熱交換器の種類

ダブルウォール型

プレートが二重構造になっており、流体の混合リスクが低減されています。食品や医薬品など異なる流体間での混合が許されないプロセスで使用されます。安全性が高い分、構造が複雑でコストが高くなります。

全溶接型

プレート全体が溶接して密閉されているため、ガス漏れが発生せず、高圧・高温条件に耐えることができます。化学プラントなど、高い安全性と耐久性が求められる場面で用いられます。

ブレージング型

金属プレートを真空ろう付けで接合したものです。小型で、冷凍回路などの用途に適しており、コストパフォーマンスにも優れています。反面、分解できないため内部清掃が困難というデメリットもあります。

メーカーHPにCGにて熱交換の仕組みがわかりやすく解説されています。

プレート式熱交換器の特徴

熱伝導率が高い

薄いプレートを介して熱交換が行われるため、効率的に熱を移動させることが可能です。プレートに生じる乱流により汚れの付着も抑制されるため、伝熱効率を長期間にわたって維持することもできます。

軽量・コンパクト

プレート式熱交換器は比較的小型で設置スペースが少なく済むため、限られたスペースに設置することができます。

メンテナンスが容易

プレートを分解して清掃できるため、汚れや詰まりのリスクが低減されます。清掃が容易であることから、衛生面での要求の高い食品加工や医薬品製造といった用途にも適しています。

熱交換器の選定方法

選定のポイント

熱交換器を選定する際には、使用条件や用途、流体の性質に基づいた慎重な判断が必要です。以下に選定のポイントを示します。

熱交換器の種類

通常はガスケット式ですが、設置スペースが限られている場合にはろう付式(ブレージング型)を選択します。

プレートの材質

一般的な空調システムでコスト効率良く使用可能 → ステンレス

海水や高腐食性の流体にも適用でき、軽量。ただし高コスト → チタン

ガスケット(パッキン)の種類

屋外環境や耐熱性・耐薬品性が求められる場合 → EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)

燃料などの耐油性が求められる場合 → NBR(ニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム)

ろう材

通常の使用環境 → 銅

海水や酸性環境など高耐食性が求められる場合 → ニッケル

熱交換器の選定に必要なパラメータ
  • 交換熱量
  • 低温側・高温側流体のそれぞれの流量
  • 低温側・高温側流体の入口及び出口温度
  • 低温側・高温側流体の許容圧力損失
  • 最高使用温度(設計温度)
  • 最高使用圧力(設計圧力)
熱交換器選定ツール

メーカーHPにて上記パラメータを入力することで、熱交換器の選定を行うことができます。

熱交換器の主要メーカー

アルファ・ラバル

プレート式熱交換器分野の世界トップ企業。幅広い業界(エネルギー、食品、化学、通運など)に対応している。

日阪製作所

国内外で幅広い産業向けの熱交換器を提供。食品・医薬業界向け熱交換器に強み。

まとめ

本記事では、熱交換器の概要と代表的な多管式、プレート式の特徴と選び方について詳しく解説しました。

熱交換器の選定にあたっては、使用条件や流体の性質を十分に考慮し、最適なタイプを選ぶことが不可欠です。

熱交換器はエネルギー効率の向上や環境負荷の低減に大きく貢献する装置であり、特に未利用エネルギーの利用には必要不可欠な装置です。

ZEB、カーボンニュートラルの普及に伴い、今後ますます導入が進むことが予想されます。

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この記事を書いた人

設備設計歴15年以上。
サラリーマンエンジニアとして日々奮闘中。
ニッチな設備業界を盛り上げるべく、情報を発信していきます。

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