ZEB時代のハイブリッド設備設計|空調・冷却・換気の最新動向

空衛学会誌202602

2026年2月号の空衛学会誌特集はハイブリッド技術。今話題の液冷データセンターから、空調、換気、給湯、加湿など様々な分野のハイブリッド技術について最新の事例や研究結果を解説しています。

目次

ZEB対応と経済性の両立を実現するハイブリッド空調システム

ガスヒートポンプと電気ヒートポンプを統合したハイブリッド空調システムの特徴を解説。

省エネBEI計算で運転の1番目に高効率なEHPを、2番目にGHPを設定して計算を実行。

高COPタイプのEHPのみのケースよりもLCCが低い結果となったと報告されている。

次世代データセンターにおける超高効率ハイブリッド冷却システムの提案

AI用サーバは空冷では処理しきれないため、液冷サーバーの普及が進んでいる。

しかしネットワーク機器やストレージでは液冷の対応が進んでいないため、全ての熱を液冷で処理することができず、20-30%は空冷が必要となる。

そのため液冷と空冷を組み合わせたハイブリッド冷却システムが求められている。

また、外気温の上昇により冷却塔フリークーリングもできなくなってきている。

こうした課題に対応するため、

  • 熱交換効率の高い熱交換器
  • 循環水流量を増大させずに冷却性能を高めた冷却塔

これらの組み合わせによりチラーの稼働を抑え、フリークーリングを主体とするハイブリッド冷却システムを開発した。

冷却塔は開放式を採用。理由は内部構造が密閉式よりもシンプルで清掃が容易なため。

一般的な冷却塔のアプローチ温度(湿球温度と冷却水出口温度の差)は5℃であるが、本システムでは2.5℃となっており、循環水が少なくても冷却性能が優れている。

pPUEは1.1〜1.3を推移し、年間pPUEは1.21。

セントラル空調方式と個別分散空調方式のハイブリッドシステム

商用ビルにおける空調方式の動向として、以前はセントラル空調が用いられてきた部分にも個別分散空調方式が採用されることが増えてきた。

ただ完全に個別分散となったわけではなく、以前であればファンコイルが使われていた部分が個別空調に置きかわったというケースが多い。

セントラル空調の特徴として、熱搬送の配管長に制約がなく大風量対応が可能温湿度制御の精度が高いといったメリットがある一方で、イニシャルが高いシステムが複雑なため設計や運用管理に技術を要するといったデメリットもある。

個別分散空調設計・管理が容易で、規格品化・量産効果でイニシャルを抑えることができる一方、冷媒配管長に制限がある大風量対応が行えないといったデメリットがある。

セントラル空調と個別空調方式のハイブリッドシステムでは外気処理をモジュールチラーと外調機、室内負荷処理をビル用マルチエアコンで行うといったケースが多い。

ハイブリッド換気

自然換気の性能は外部環境に大きく影響を受けるため不安定で、それを機械換気で補うシステムをハイブリッド換気と呼ぶ。

ハイブリッド換気には自然換気をアシストするための最小限の機械換気を取り入れるものと、自然換気と最小の機械空調を行うものがある。

通常の自然換気では、一度機械空調に切り替わってしまうと空調機による室温一定制御となり、幅をもった室温を許容する自然換気をその日のうちに再開することは困難となる。

ハイブリッド換気のメリットは変動を許容し、幅をもった範囲内に室内環境を制御することで、機械空調に頼る割合を減らすことができる点にある。

ハイブリッド換気の効果シミュレーションでは開口面積が小さい場合には負荷削減率の効果は薄いが、ハイブリッド換気により外気冷房効果を増加させることができている。

しかしながら近年の厳しい外気条件により、自然換気有効時間は減少傾向にある。

東京では2000年代は約1000時間あったものが、2020年代に入り700〜800時間にまで減少している。

逆に札幌などの寒冷地では、温暖化により自然換気有効時間が若干増加している傾向がある。

ハイブリッド換気には以下のように様々なシステムがある

アシストファン併用

自然換気の換気量が不足する場合に、換気経路内に設置されたアシストファンにより換気量を確保する方式

外気冷房併用

自然換気で換気量が不足する場合に、空調機の外気冷房を併用することで外気導入量を増加させる方式

シーリングファン併用

自然換気時に室温が上昇した場合、シーリングファンによる気流を増加させることによって快適性を確保する方式

放射空調併用

自然換気では空調空気を短時間で外部に排出してしまうため、空調効率が低下する。そうした対流空調による欠点を補うために、放射空調を併用する方式。

ペリメータ空調併用

小部屋などの個別制御の観点から、ファンコイルなどのペリメータ空調機により自然換気をアシストする方式

外気の予冷・予熱併用

外気導入時のクレーム低減のため、排熱や地熱・井水などの自然エネルギーにより外気を予冷・予熱する方式

ハイブリッド加湿方式における性能評価に関する検討

コロナ禍を経て居室に対する外気導入量が増加しており、従来の加湿器では冬期における加湿能力不足、エネルギー消費の増大が課題となっている。

そこで気化式をベースとし、不足する加湿量を電極式で補うハイブリッド加湿方式が開発された。

実験の結果、ハイブリッド加湿は電極式に比べて少ない電力で同程度の加湿を行うことができることがわかった。

電気式ヒートポンプ熱源機と燃焼式温水機とのハイブリッド給湯システム

小容量の電気式ヒートポンプ熱源機(EHP)と大容量の燃焼式熱源機を組み合わせたハイブリッド熱供給システム。

従来の燃焼式熱源機だけでは実現できなかった高いシステム効率を有しながら、従来のEHPでは実現できなかった負荷変動への追従性能を兼ね備えている。

高効率のEHPを優先的に運転させ、貯湯タンクへ蓄熱し、その熱量以上の給湯負荷の場合には温水機がバックアップを行う。

外皮に関わる話題(2)窓における昼光導入と日射熱制御の両立

昼光利用を考慮した際の照明・空調エネルギーに関する検討経緯や評価法に関する動向の解説

昼光利用を考慮した空調負荷シミュレーションは1980年ごろにHASP-Lによる検討が行われ、のちにHASP/ACLD/8501に実装されている。

その後Low-eガラスや自動制御ブラインドなど、空調負荷と照明電力量の削減を念頭においた技術マニュアルSHASE-M 1008-2009がまとめられた。

さらにガラス種別や内/外ブラインド、開口率と空調負荷・照明電力量との関係性についての検討も進められてきた。

シミュレーションでは照明電力は壁面あたりの開口率40%程度で削減効果が底打ちとなり、それ以上に開口率を増やした場合には冷房負荷が増加傾向となる。

したがって、開口率30〜40%程度が電力消費と空調負荷のトータルでエネルギー消費量が最小となる。

また2013年の省エネ法改正以降、昼光利用に関わる因子の照明エネルギー削減への影響を系統的に把握する光環境シミュレーションツールであるRadienceを用いた検討も進められてきている。

最近では3D CADソフトのプラグインを用いることでRadienceEnergyPlus(米国のエネルギーシミュレーションツール)の計算実行のハードルが下がっており、実務での普及が急速に広まっている。

技術者のための正確で確実な建物加圧ガイド

建物環境の維持には適切な加圧が必要。

加圧が不十分だと高温多湿な外気が建物内に侵入し、結露やカビの原因となる。

一方で加圧が強すぎるとエネルギー消費が大きくなる、扉が開いたままになるなど運用に支障がでる。

建物の加圧にはどれほどの空気量が必要なのか?

実務では「外気導入量の10%」というのが、経験則として用いられてきた。

しかしこの経験則だけでは不十分なケースがあり、より詳細で定量的な分析が必要となる。

加圧量の下限は5Paで、これ以下の加圧では建物に突風が当たると外気が侵入する。上限は25Paで、これを超えると過剰な加圧となりドアが勝手に開いたり避難時に扉が開けられないといった事態が発生する。

このことから理想的な加圧量は12.5Paと設定する。

一般のオフィスビルで条件設定をして、外気量の10%分の加圧を見込んで計算したところ、圧力は0.65Paとなり、加圧量が不足しているという結果となった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

設備エンジニアとして日々奮闘しながら、より良い職場を求めて転職活動中。
複数の転職エージェントに登録。
自己分析や企業研究で得た知見を発信していきます。
【保有資格】
・設備設計一級建築士
・建築設備士
・一級管・電気工事管理技士ほか
詳しいプロフィールはこちら

コメント

コメントする


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

目次