1級管工事施工管理技士 第一次検定の令和7年 第7問は、湿り空気線図上で「水スプレー加湿」の状態変化方向を選ぶ問題でした。4つの矢印のうち正しい方向を1つ選ぶ、空気線図の読解力が問われる1問です。
本記事では1級管工事施工管理技士を保持する現役設備エンジニアの視点から、結論→線図の読み方→状態変化の原理→誤答パターン→実務目線の流れで一気に整理します。覚えるのは「水スプレー=等エンタルピー方向」の1原則だけ。読み終わるころには、加湿・除湿・加熱・冷却の4方向を迷わず判別できるレベルになっています。

湿り空気線図は空調設計の「地図」。この1問をきっかけに線図の読み方を身につけると、第17問(コイル負荷計算)や第21問(換気設備)にもそのまま使えますよ。
令和7年 1級管工事 第7問はこんな問題(グラフ読解型)


令和7年 第7問は、湿り空気線図に示された空気Aに水スプレーで加湿した場合、状態点がどの方向に移動するかを4択から選ぶ問題です。
湿り空気線図上の点Aで示された空気に水スプレーで加湿を行った。加湿後の空気の状態変化として適当なものを、図中の①〜④から選べ。
正解は③です。
問題本文・図は公式PDFを下のボタンから確認できます。
※公式サイトでは過去年度のPDFが順次削除される場合があります。リンク切れ時は過去問アーカイブサイトをご利用ください。



計算は不要で、線図上の「方向」を選ぶだけ。原理さえ押さえれば10秒で解ける問題です。
結論:正解は③/水スプレー加湿=等エンタルピー変化


先に答えだけ知りたい方のために結論をまとめます。正解は③。水スプレー加湿は「ほぼ等エンタルピー線に沿った変化(断熱加湿)」で、乾球温度が下がりながら絶対湿度が上がる方向です。
- 加湿方式:水スプレー(断熱加湿)
- 状態変化の方向:乾球温度↓、絶対湿度↑、相対湿度↑、エンタルピーほぼ一定
- 線図上の動き:左上方向(等エンタルピー線に沿って飽和曲線に向かう)
覚え方は、「水が蒸発するとき、空気の熱を奪って冷やす」。打ち水をすると涼しくなるのと同じ原理です。空気のエンタルピー(保有する熱エネルギーの総量)は変わらず、顕熱が潜熱に置き換わるため温度が下がって湿度が上がります。



「打ち水=水スプレー加湿」とイメージすれば、温度が下がって湿度が上がる方向はすぐ判断できます。
湿り空気線図の基本|代表的な5つの状態量を押さえる


湿り空気線図(h-x線図)は、空気の温度・湿度・エンタルピーなどの関係を1枚の図にまとめたものです。空調設計の「地図」にあたり、この線図が読めると加湿・除湿・加熱・冷却のすべての状態変化を視覚的に追えます。
線図上で押さえるべき代表的な状態量は5つ。このほかにも露点温度や水蒸気分圧を読み取れますが、試験対策ではまずこの5つが最重要です。
| 状態量 | 記号 | 線図上の読み方 |
|---|---|---|
| 乾球温度 | t [℃] | 横軸(下の目盛り) |
| 絶対湿度(湿度比) | x [kg/kg(DA)] | 縦軸(右の目盛り)。乾き空気1kgあたりの水蒸気量 |
| 相対湿度 | φ [%] | 曲線群(飽和曲線が100%) |
| エンタルピー | h [kJ/kg(DA)] | 斜め線(左上→右下の等エンタルピー線) |
| 湿球温度 | t’ [℃] | 飽和曲線上の目盛り(≒等エンタルピー線に沿う) |
特に重要なのが飽和曲線。これは相対湿度100%のラインで、空気が水蒸気をこれ以上抱えきれない限界を示します。すべての加湿プロセスは、この飽和曲線に近づく方向に進みます。
日本の空調設計ではh-x線図(エンタルピー-絶対湿度線図)が標準。一方、北米ではASHRAEサイクロメトリック・チャート(乾球温度-絶対湿度が主軸)が主流です。試験ではh-x線図が出題されます。



線図は「乾球温度=横、絶対湿度=縦、エンタルピー=斜め」の3軸がわかれば十分。残りは使いながら覚えましょう。
水スプレー加湿の状態変化|なぜ「左上方向」に動くのか


水スプレー加湿は、実用上「断熱加湿」に分類されます。外部から熱を加えず、空気自身の顕熱で水を蒸発させる方式です。
断熱加湿のメカニズム(3ステップ)
- 水を噴霧:スプレーノズルから微細な水滴を空気中に放出
- 蒸発で顕熱を奪う:水滴が蒸発するとき、空気の顕熱(温度に関わる熱)を気化熱として吸収。乾球温度が下がる
- 潜熱に変換:奪われた顕熱は水蒸気の潜熱として空気中に残る。エンタルピー(=顕熱+潜熱の合計)はほぼ一定
エンタルピーがほぼ一定のまま絶対湿度だけ増える方向。線図上ではほぼ等エンタルピー線に沿って左上方向(飽和曲線に向かう方向)に移動します。このとき湿球温度もほぼ一定で、水スプレー加湿は等湿球温度変化ともいいます。
蒸気加湿との違い|方向がまったく異なる
もう1つの代表的な加湿方式が蒸気加湿。ボイラーで作った蒸気を空気に直接吹き込む方式です。
| 加湿方式 | 線図上の方向 | 乾球温度 | 絶対湿度 | エンタルピー |
|---|---|---|---|---|
| 水スプレー(断熱加湿) | 左上方向(等h線沿い) | 下がる | 上がる | ほぼ一定 |
| 蒸気加湿 | やや右上方向 | 若干上がる | 上がる | 上がる |
蒸気は外部でつくった高温(100℃前後)の水蒸気を加えるため、温度が若干上昇しながら湿度が増えます。試験では「水スプレー」と「蒸気加湿」の方向の違いが頻出です。この2つを対比で覚えておけば、加湿の問題はほぼ対応できます。



水スプレー=打ち水(温度下がる)、蒸気加湿=やかんの湯気(温度が若干上がる)。イメージで覚えると忘れません。
誤答パターン|他の選択肢はこんな変化に対応


不正解の選択肢は、水スプレー以外の空調プロセスを示しています。各方向がどんな処理に対応するかを整理すると、消去法でも正解にたどり着けます。
| 選択肢 | 方向(h-x線図上) | 対応する空調プロセス | 具体例 |
|---|---|---|---|
| ① | 右上方向(温度↑・湿度↑) | 加熱+加湿の複合処理 | 加熱コイル+蒸気加湿の同時処理 |
| ② | やや右上方向(温度若干↑・湿度↑) | 蒸気加湿 | 蒸気噴霧加湿器 |
| ③ | 等エンタルピー方向(温度↓・湿度↑) | 水スプレー加湿(断熱加湿)=正解 | 水噴霧加湿器、気化式加湿器 |
| ④ | 左下方向(温度↓・湿度↓) | 冷却除湿 | 冷水コイル(露点以下に冷却) |
よくある間違いは蒸気加湿との混同。「加湿=湿度が上がる」まではわかっても、温度が「下がる」のか「変わらない」のかで迷うパターンです。水スプレー=気化熱で冷える(③等エンタルピー方向)、蒸気=高温蒸気で若干温まる(②やや右上方向)と区別してください。



基本の十字は「加熱=右、冷却=左、加湿=上、除湿=下」。実際のプロセスはこの組み合わせで、水スプレー加湿は冷却+加湿=左上、冷却除湿は冷却+除湿=左下になります。
関連する過去問の出題傾向|湿り空気線図は頻出テーマ


湿り空気線図は、1級管工事施工管理技士の第一次検定でほぼ毎年出題される超頻出テーマです。出題パターンは大きく3つ。
- 状態変化の方向を選ぶ:加湿・冷却などの矢印の方向を4択で選ぶ
- コイルの加熱・冷却負荷を計算:線図から比エンタルピー差を読み取り、送風量を掛けて負荷[W]を求める
- 露点温度や相対湿度の読み取り:線図上の交点から値を読み取る
今回の「方向を選ぶ」パターンは計算不要で確実に得点できるタイプ。4方向の基本パターンさえ覚えていれば取りこぼす理由がありません。



湿り空気線図は覚えてしまえば得点源になりやすいテーマ。今回の方向判別ができれば、コイル負荷計算にもステップアップしやすいです。
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試験=線図上の方向を即判断、実務=加湿方式の選定など、日常的に使う


空気線図は空調設計の基盤であり、加湿方式の選定やコイル負荷の概算など、様々な場面で日常的に使います。
①加湿方式の選定=コスト・メンテ・温度変化の三択
空調設計で加湿器を選ぶとき、水スプレー(気化式)と蒸気加湿のどちらにするかは現場の定番テーマ。水スプレーはランニングコストが安いが温度が下がるため再加熱が必要になるケースがある。蒸気加湿は温度変化が小さいがボイラーが必要。この判断の根拠が、まさに線図上の方向の違いです。
②外調機(OHU)の設計=外気処理の全工程が線図上の移動
外気を室内条件まで処理する外調機の設計は、線図上に状態変化の経路を描く作業そのもの。加湿量の不足やコイル能力の過不足は、この経路を正しく描けるかどうかで見落としが変わります。
③結露判定=露点温度を線図から読む
壁面やダクト表面の結露リスクを評価するとき、線図から露点温度を読み取って表面温度と比較します。ソフトに任せる場面も多いですが、現場で「この条件なら結露するか?」を即答するには線図の読み方が頭に入っている必要があります。



線図が読めると、加湿方式の比較や外気処理の設計で「なぜこの仕様なのか」を自分の言葉で説明できるようになります。
まとめ|水スプレー加湿は「等エンタルピー・左上方向」を覚えるだけ


令和7年 第7問のポイントを最終確認します。
- 正解は③:水スプレー加湿はほぼ等エンタルピー変化(断熱加湿)
- 方向は「左上」:乾球温度↓・絶対湿度↑・エンタルピーほぼ一定
- 蒸気加湿との違い:蒸気は温度が若干上昇しながら湿度が上がる(やや右上方向)
- 覚え方:「打ち水=水スプレー=蒸発で冷える」
湿り空気線図は覚えてしまえば得点源。基本の十字「加熱=右、冷却=左、加湿=上、除湿=下」を押さえたうえで、水スプレー加湿=左上(断熱加湿)、冷却除湿=左下のように組み合わせで判断すれば本番で迷いません。



方向パターンを覚えたら、次はコイル負荷計算(第17問タイプ)にステップアップ。線図の読み方が身についていれば、あとは掛け算するだけです。
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